研究概要 |
モデルsiRNAとしてsiGL3、ベクターとして分子量70,000の分岐型PEI (B-PEI)、賦形剤にマンニトール、分散補助剤にロイシンを用いて噴霧急速凍結乾燥法によりsiRNAの吸入粉末剤を調製した。肺転移癌モデルマウスに製剤を肺内投与した。Control群(siRNA不含)およびsiRL/B-PEI粉末製剤、B-PEI粉末製剤、naked siGL3粉末製剤投与群では肺内発光強度が顕著に増加した。siGL3/B-PEI粉末製剤投与群では肺内発光強度の増加は認められず、siRNA投与量3μgでも有意に抑制できた。また、siGL3/B-PEI溶液よりも優れた遺伝子発現抑制効果が確認された。 分子量が異なるB-PEI (25 kDaおよび70 kDa)を用いた 微粒子をマウス肺内に投与し、気管支肺胞洗浄液 (BALF)中の乳酸脱水素酵素 (LDH)活性ならびに炎症性サイトカイン濃度を測定した。siRNAの投与量依存的な肺組織障害性が認められるとともに、25 kDaよりも70 kDaのB-PEIが肺組織障害性が高いことが示唆された。一方、微粒子投与群の方が同組成溶液投与群よりもLDH活性が低くかった。B-PEIの分子量ならびに溶液および粉末の違いに依らずsiRNAとして3μg投与群においては、炎症性サイトカイン濃度がコントロール群と同程度であったことから、炎症性は比較的軽微であることが示唆された。 Cy5.5で化学修飾したCy5.5-siRNAついて、構造安定性を電気泳動により評価した。核酸染色に用いたSYBR GoldとCy5.5由来の蛍光のバンドを比較したところ、血清中よりも肺ホモジネート中の方がCy5.5-siRNAとして安定に存在していた。またCy5.5-siRNAをマウス肺内に投与し、摘出肺を溶解した試料を電気泳動により評価したところ、siRNAのバンドの位置にCy5.5由来の蛍光が検出され、肺内での構造安定性が確認できた。Cy5.5-siRNA/B-PEIの静脈投与および経気道投与において、Cy5.5-siRNA単独よりも生体内でのCy5.5-siRNAの構造安定性が高められた。
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