強い抗酸化作用と有用な生理作用をもつレスベラトロールをはじめとするポリフェノールの皮膚適用が検討されているが、皮膚取り込みが悪く目的の達成ができていない。そこで、難溶性薬物の吸収促進系として利用されているマイクロエマルションによる効率的なポリフェノール皮膚取り込み系の確立を考え、皮膚傷害性の低いショ糖ラウリン酸エステルやテトラグリセリンラウリン酸エステルを界面活性剤として用い、主としてユカタンマイクロピッグの皮膚を用いたin vitroでの実験により検討を行って来た。最終年度は、これらに加え、環状化合物の少ないペンタグリセリンラウリン酸エステルを界面活性剤として用いた場合や、補助界面活性剤としてエタノールではなくエトキシジグリコールを用いた場合についても検討した。その結果、環状化合物の少ないペンタグリセリンラウリン酸エステルを界面活性剤として用いて調製したマイクロエマルションによって効率よく安定したレスベラトロールの皮膚取り込みが観察された。また、親油性が高く分子量の小さなレスベラトロールは、皮膚中では真皮に分布し、レセプター側まで移行する割合は非常に少なかった。レスベラトロールの表皮/真皮分布比は、油相と水相の比を変えても、補助界面活性剤や油相を変えた場合でも、ほとんど変化しなかった。レスベラトロールは、真皮に高濃度に存在するアルブミン等のタンパク質に結合して存在する可能性が推定された。一方、親水性で分子量がより大きなクロロゲン酸は、すみやかに表皮に分布するものの、真皮へ分布する割合は非常に小さかった。このことから、クロロゲン酸はマイクロエマルションによって親水性の化合物にとって透過バリアーである角質層の水和が促進されることによって表皮までは到達するものの、真皮までは移行しにくいことが推定され、ポリフェノールの分布特性を考慮した皮膚適用が必要であることがわかった。
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