研究課題
著者は,酸素存在下では瞬時にパーオキシラジカルに変換する高分子粉末のメカノラジカルが,結晶性の糖粉末とともに振動混合処理すると大気中でも長時間安定に存在することを見出した.この結果について、着想の原点であるメタクリル系高分子と、myo-イノシトールを用いて精査したところ、高分子と固体低分子間の強固な水素結合のネットワーク形成による酸素拡散抑制効果が確認された。加えて、各成分の混合比や振動混合処理条件についても精査し、酸化反応抑制効果を最大化する最適条件を探索した。さらに、本システムの応用適用性を理解するため、同種の物理化学特性を有する各種糖類やアミノ酸類の低分子化合物を用いて検討したところ、化合物の水素結合能および粉末間の水素結合のネットワーク形成能により、酸素拡散抑制効果が大きく異なることを明らかにした。以上の基礎的知見を基に、アスコルビン酸(加水分解および参加分解するモデル薬剤として選択)のmyo-イノシトールを用いた安定化について検討を行った。アスコルビン酸は、水素結合が可能な水酸基が分子に4箇所あり、myo-イノシトールと共に混合処理することにより、粒子表面間の相互作用が生起すると考えられた。処理したアスコルビン酸は空気中(温度: 37℃、湿度: 60%)での安定性は未処理(アスコルビン酸: 試験7日目で95%残存)に比べて大幅に向上(20%myo-イノシトール含有アスコルビン酸: 試験7日目で99.9%残存)し、アスコルビン酸の酸素酸化抑制効果が達成された。以上のように、myo-イノシトールをはじめとする水素結合ネットワーク形成能を有する結晶性低分子化合物を用いて、粒子表面改質(カプセル化)を行うことにより、要酸化防止医薬品の酸化分解抑制が可能であり、そのメカニズムを明らかにした。以上、本研究より得られた知見は、非常に簡便な酸素酸化防止用製剤調製法としての応用展開が期待できる。
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