研究課題
生活習慣病や抗加齢、さらには放射線防護へ応用可能な新規抗酸化物質を開発する目的で、本年度は、緑茶に含まれているカテキンの誘導体を分子設計した。(+)-カテキンのカテコール環に電子供与性のメチル基を2つ導入すると、イオン化エネルギー(IP)が顕著に低下し、ラジカル消去活性の向上が示唆された。実際、活性酸素種のモデルとしてガルビノキシルラジカルを用い、アセトニトリル中、ジメチルカテキン誘導体のラジカル消去の二次反応速度定数(k)をストップトフロー法により決定すると、(+)-カテキンのk値より約40倍大きくなった。次に、(+)-カテキンの分子内に種々のアミノ酸部位を持つ誘導体を合成した。得られた誘導体のk値はIP値と良好な相関を示し、分子内にリジンを持つ誘導体のラジカル消去活性が最も高くなった。さらに、得られた化合物の細胞に対する毒性(プロオキシダント効果)および放射線防護活性をラットの胸腺細胞を用いて検討した。ラット胸腺細胞にX線を照射するとアポトーシスを起こし、その細胞サイズが縮小することが知られている。(+)-カテキンやその誘導体のいくつかは、この細胞サイズの縮小を顕著に抑制したことから、ラット胸腺細胞に対して放射線防護活性を示すことが分かった。また、誘導体の中には放射線の照射なしでアポトーシスを誘導し、ラット胸腺細胞に対して毒性を示した。X線による細胞障害の主な原因は、水の電離によるヒドロキシルラジカルの生成であることから、放射線防護活性を示す化合物は、活性酸素種が原因と考えられている種々の疾病の予防にも有用であると考えられる。一方、ラット胸腺細胞に対する放射線防護活性とラジカル消去活性の間には相関が認められず、どのような分子設計を行えば細胞に対しても有効な抗酸化物質が開発できるかは今後の課題である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (31件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件)
J. Clin. Biochem. Nutr
巻: 54巻 ページ: 75-80
10.3164/jcbn.13-61
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 24 ページ: 2582~2584
10.1016/j.bmcl.2014.03.029
Chemical Communications
巻: 50 ページ: 814~816
10.1039/C3CC47819J
Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition
巻: 54 (Supplement) ページ: 134
巻: 54 (Supplement) ページ: 80
巻: 54 (Supplement) ページ: 74
巻: 54 (Supplement) ページ: 73
巻: 54 (Supplement) ページ: 67
Anal. Chem
巻: 85巻 ページ: 7650-7653
10.1021/ac401903h
巻: 49 ページ: 9842~9844
10.1039/C3CC45124K