研究課題
(1)BLT1のプロモーター解析;ロイコトリエンB4第一受容体(BLT1)に関し、血球系細胞株(HL60)において、プロモーター領域に結合する因子の解析を行なった。BLT1プロモーター内には機能に不可欠なSp1サイトが存在するが、BLT1の血球細胞内発現にはSp1以外の因子が結合することを確認し、有力な候補因子として17種類あるKLFファミリーの何れかであるところまで絞り込むことが出来た。(2)糖鎖修飾を受けないGPCRのER品質管理;新生膜蛋白質のER内品質管理にはN型糖鎖修飾が不可欠とされるが、我々は、ヒトGPCR(約900種)の内、約5.5%に相当する約50種のものがN型糖鎖修飾モチーフを持たないことをデータベース解析から見出した。この内の代表としてα2B型アドレナリン受容体を材料とし、実際に糖鎖修飾を受けずに膜表面に発現すること、その変異型(細胞外S-S結合破壊)が小胞体蓄積することを確認し、糖鎖非依存的な品質管理機構が存在することを示唆した。(3)GPR109aの新規N型糖鎖付加モチーフ解析; ニコチン酸を認識するGPR109aは、典型的なN型糖鎖モチーフ(NxS/T)を持たないものの(上記5.5%に含まれる)、糖鎖修飾を受ける。我々は、この受容体が持つ糖鎖修飾モチーフが-NxC-であることを明らかにした。また、この修飾における責任酵素(oligosaccharyltransferase)が2種類(STT3のA型とB型)知られている内のB型であることを示唆した。先行研究では大半の膜蛋白質がA型酵素で修飾を受け、B型は補完的役割が示唆されていることを考えると、このモチーフとB型との関係には新しい制御の存在が推察される。(4)表在GPCRのリン酸化修飾; BLT1のC末端領域にはアゴニスト刺激非依存的と依存的な2種類のリン酸化サイトが存在することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
本課題は転写制御、品質管理、表在受容体の修飾制御の3つの観点から進めているが、全てのテーマにおいて今後に繋がる成果を得ることができた。これら結果を足掛りとすることで次年度の飛躍が期待出来る。
(1) 血球系細胞特異的発現GPCRの発現制御;血球系細胞に高発現するGPCRの中には遺伝子発現制御が未解明なものが幾つかある(GPR41,GPR43など)。我々はこうしたGPCRの発現制御解析についても次年度から並行して進める。そして、既存情報も含め、様々な血球系特異的発現GPCRの発現制御機構を比較しながらBLT1特異的な転写制御を目指した場合の標的探索や実際の発現制御可否検討を行う。(2)非糖鎖修飾GPCRの品質管理機構解明;次年度以降は、免疫共沈、2次元電気泳動、プロテオミクス解析技術などを駆使し、ER内での非糖鎖修飾型、及び糖鎖修飾型GPCRの品質管理、ER搬出に関わる責任分子を探索したいと考えている。また、責任分子同定後、その分子よるER内品質管理、搬出コントロールのメカニズム解明に取組みたいと考えている。(3)表在GPCRのUb化およびリン酸化修飾;表在BLT1のUb化やリン酸化部位を決定後、その部位の変異受容体を作製し、BLT1の形質膜への輸送、シグナリング、細胞内取込み、リサイクル/分解制御などへの影響を調べる。我々は最近までの研究で、点変異で構造異常を施したGPCRを薬理学的シャペロン(特異的リガンド)処理で細胞膜に到達させることが可能なこと、こうして細胞膜に移送させたGPCRの中には機能的に野生型と差異がないものもあることなどを報告したが、GPCRのER搬出機構解明の中で、これらの課題も発展継続させるつもりである。我々はこれら研究の中で、表在GPCRのみの特異的標識法としてブドウ球菌由来のペプチド転移酵素"Sortase-A"を用いた技法の実用にも成功した。こうした新技法も本課題に引き続き取り入れたいと考えている。
次年度受領額の範囲内で上記方策を遂行する計画である。
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Methods in Enzymology
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