研究課題
免疫組織化学染色により、EphA2 Ser-897リン酸化(pEphA2)とRSKリン酸化(pRSK)を検討した。まず、ヒト組織マイクロアレイを用いた検討により、多くの組織で両者のリン酸化が極めて高効率に共局在することがわかった。pEphA2は細胞膜と細胞質に、一方pRSKは核と細胞質が染まり、組織上では同一細胞に染まるが、細胞内局在はそれぞれのタンパク質の性質を反映していた。したがって、RSKによるEphA2 Ser-897のリン酸化は、腫瘍内の主にがん細胞で起こっていることが明らかとなった。次に、肺がん組織に焦点を当て、予後との相関を検討した。ヒト肺がん組織355症例からなる組織アレイを用いて検討した結果、pEphA2とpRSKの共局在が腺がんおよび扁平上皮がんともに認められた。予後との相関を検討した結果、両者とも陽性群の予後が有意に短いことがわかった。特に、喫煙歴を有する患者において顕著な差が認められた。一方、RSKのリン酸化レベル、またはRSK1の発現レベル単独では予後との相関は認められなかった。肺がん患者の予後との相関が認められたため、肺がんの多くを占める非小細胞肺がんの発がん遺伝子との関連性を調べた。その結果、EGFR、ALKおよびKRASといった発がん遺伝子シグナルがRSK-EphA2経路を活性化することが分かった。さらに、EGFR変異陽性肺がん患者においてもpEphA2とpRSKの共局在が認められことから、これら発がん遺伝子シグナルが患者予後に影響している可能性が考えられた。以上の検討により、RSK-EphA2経路という新たながん悪性化・進展シグナルの同定に成功した。今後、この経路の制御によるがん分子標的治療への応用が期待される。
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Biochem. Biophys. Res. Commun.
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Helicobacter
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