研究課題/領域番号 |
23590080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久下 理 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30177977)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体膜 / リン脂質 / 細胞内輸送 / 酵母 |
研究概要 |
リン脂質のオルガネラ間輸送やオルガネラ内輸送は、生体膜の形成・機能維持に必須の反応である。しかし現在、膜脂質の細胞内輸送に関与する遺伝子やタンパク質に関する情報は極めて少なく、これらの同定・解析が、生体膜の形成・機能維持機構の解明に急務を要する重要な研究課題となっている。 酵母のミトコンドリア内膜には、ホスファチジルエタノールアミンとカルジオリピン合成経路が存在するが、これら経路によりホスファチジルエタノールアミンあるいはカルジオリピンが生合成されるためには、その前駆体リン脂質がミトコンドリア外からミトコンドリア内膜に輸送される必要がある。一方近年、酵母は、ミトコンドリアのホスファチジルエタノールアミンとカルジオリピンの合成経路がそれぞれ損傷しても生育に異常を示さないものの、両者の合成経路が同時に損傷すると致死性になることが示された。 本研究では、この致死性を利用して、リン脂質のミトコンドリア内膜への輸送に関与する候補遺伝子の同定を試みた。すなわち、ミトコンドリアでホスファチジルエタノールアミンを合成するホスファチジルセリン脱炭酸酵素1の遺伝子PSD1との2重欠損で合成致死あるいは合成増殖損傷となる遺伝子、およびミトコンドリアのカルジオリピン合成酵素の遺伝子CRD1との2重欠損で合成致死あるいは合成増殖損傷となる遺伝子の検索を行った。その結果、そのような遺伝学的相互作用を示す、リン脂質代謝・輸送関連遺伝子の候補を多数同定することに成功した。また、それら遺伝子の機能解析を一部進めたところ、本検索でヒットしたGIP4遺伝子が欠損するとカルジオリピンのレベルが低下し、その生合成前駆体のリン脂質であるホスファチジン酸が蓄積することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ミトコンドリアでホスファチジルエタノールアミンを合成するホスファチジルセリン脱炭酸酵素1の遺伝子PSD1との2重欠損で合成致死あるいは合成増殖損傷となる遺伝子、およびミトコンドリアのカルジオリピン合成酵素の遺伝子CRD1との2重欠損で合成致死あるいは合成増殖損傷となる遺伝子の検索を行った。その結果、PSD1との2重欠損で致死あるいは増殖損傷となる遺伝子24個を同定し、CRD1との2重欠損で致死あるいは増殖損傷となる遺伝子を43個同定した。また当初予定したようにこれら遺伝子の機能解析も、生化学的、細胞生物学的、分子生物学的に行っており、これら遺伝子の多くがリン脂質の代謝、あるいは輸送に関与することが明らかにされつつある。また興味深いことに、本検索によりヒットした遺伝子の一つであるGIP3が欠損した細胞では、エンドソームの酵素であるホスファチジルセリン脱炭酸酵素2の活性がほとんど検出されなくなることも見出した。このように、本研究は概ね予定通りに順調に進展しており、さらに予想外の興味深い研究成果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに、ホスファチジン酸あるいはホスファチジルセリンのミトコンドリア内膜への輸送に関与する遺伝子の候補が多数同定された。そこで、平成24年度以降は、これら遺伝子によりコードされているタンパク質の詳細な性状解析を行う。具体的には、それらタンパク質の細胞内局在の決定、1次配列から予想される機能の検証・確認、相互作用するタンパク質あるいはリン脂質の同定を生化学的、分子生物学的、あるいは細胞生物学的手法で行う。また、これら遺伝子と相互作用する遺伝子を同遺伝子の欠損株を用いて同定し、リン脂質のミトコンドリア内膜への輸送に関与する遺伝子をさらに同定、解析する。得られた情報を基盤に、リン脂質のミトコンドリア外膜への輸送、およびミトコンドリア外膜から内膜への輸送を試験管内で再構成する。この再構成系を用いて、各遺伝子産物の機能を明らかにするとともに、リン脂質のオルガネラ間およびオルガネラ内の輸送機構を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究を実施するにあたり、酵母遺伝学に必要な高額な設備(高温・中温・低温の恒温培養器、顕微鏡、マイクロマニュピレーター付き顕微鏡、蛍光顕微鏡、超遠心機、微量高速遠心機、冷却遠心機等)は、ほぼ整っており、本研究費は主に消耗品費と少額備品に使用する。研究を実施するにあたり、酵母細胞の継代・培養に必要な試薬・ガラス実験器具・プラスチック実験器具、脂質代謝を解析するための放射性薬品、分子生物学的解析に必要な試薬・実験器具、タンパク質の精製に必要な各種クロマトグラフィー担体・薬品、免疫化学的解析に必要な薬品等、多量の消耗品が必要であり、本研究費のほとんどはこれらの消耗品費に充てる。また、少額備品として恒温水槽、アルミブロック恒温槽、卓上小型振とう機等の補充が研究の推進に必要であり、本研究費の一部はこれらの少額備品補充に充てる。さらに研究費の一部は、当該研究領域の国内外研究者との研究打合せ、および成果発表のための旅費に充てる。
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