平成25年度も引き続きM1ファミリー酵素であるピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ(hPSAP)とS9ファミリー酵素であるオリゴペプチダーゼB(OPB)を中心に研究を行った。 hPSAPについて、大腸菌オルソログであるeAPNとの一次配列比較から、酵素活性発現に重要と考えられたeAPNのLys319とTyr376に対応するAsn337とPhe389の部位特異的変異体を構築して速度論的解析を行った。F389Y変異体のKm値は変化せずkcat値が大きく低下したことから、Phe389はミカエリス複合体形成ではなく触媒反応に関与していると考えられた。eAPNのTyr376はN末端アミノ基を認識するGlu121と相互作用しており、これは構造解明されているhuman leukotriene A4 hydrolase (LTA4H) でも同様であったが、もう一つの既知結晶構造であるThermoplasma acidophilum tricorn interacting factor F3 (TIF3) では反応中間体安定化残基であるTyr351(eAPNのTyr381)の方を向いていた。従って、hPSAPのF389Y変異体においては、Glu136またはTyr394残基(eAPNのGlu121かTyr381)との相互作用により代謝回転数が低下したのではないかと推測している。 OPBについては、Rhodococcus erythropolisの酵素の結晶を得ることに成功し、結晶化条件の最適化を行い、X線回折データ収集を計画している。他の菌由来の酵素についてもいくつかの結晶が得られたが、解析に十分な大きさの結晶を得るための条件検索を継続中である。また、基質阻害現象を示さないユニークなSerratia marcescens OPBの解析に向けた部位特異的変異体の構築を行っている。
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