研究課題
近年,申請者は,がん抑制遺伝子である p53 が E2F1 への結合を介して Myeloid elf-1 like factor (MEF) の発現を転写レベルで抑制することを見出した(Taura M, Suico MA, et al., Nucl Acids Res. 2010).本研究では,MEF の発現制御機構の全容解明を究極の目的とし,p53 による MEF の翻訳後発現制御機構の解明を行なった.その結果,p53陽性細胞に比べ,p53 欠損細胞におけるMEFの発現量は上昇していたことから,p53は,MEFの蛋白質発現量を負に制御する因子であることが明らかになった.一方,p53によるMEF蛋白質の発現抑制には,MEF蛋白質の安定性の変化が関与していることがCHXチェイス実験で明らかになり,p53は,MEF蛋白質発現のみならずその機能をも抑制することを見いだした.また,p53によるMEFの発現抑制は,プロテアソーム阻害剤であるMG-132により阻害されたことから,p53は,MEF蛋白質のプロテアソーム分解を促進することが明らかになった.最後に,p53が影響を与えるプロテアソーム分解制御因子であるE3リガーゼのスクリーニングを行い,p53は,MDM2の発現レベルを転写依存的に亢進し,その結果として,MEFの発現量を減少させるというユニークなメカニズムが存在することが明らかになった.
2: おおむね順調に進展している
平成23年度は,がん抑制遺伝子 p53 による MEF の翻訳後制御機構の解明を中心に検討する予定であり,最終的に,p53がプロテアソーム分解制御因子であるE3リガーゼのMDM2の発現レベルを転写依存的に亢進し,その結果として,MEFの発現量を減少させるというユニークなメカニズムが存在することが明らかになり,当初の計画通りに計画が進行した.
がん抑制遺伝子 p53 による MEF の翻訳後制御機構の解明が当初予定通りに進行したが,未だに不明な点もある.そこで,平成24年度以降は,さらに,MDM2とMEFの関係性に着目し,より詳細なデータ解析を行う.具体的には,(1) MDM2がMEFの安定性に影響を与えるか否か,(2) MDM2とMEFの相互作用部位を,mutagenesis法やマンマリアンツーハイブリッドシステムを用いた解析により同定,(3) MEFの分解が引き起こされる局在の同定(核内か細胞質か?),(4) MDM2以外のE3リガーゼの関与の詳細検討,を実施する.また,当初予定であったがん抑制遺伝子 pRb による MEF の制御機構の解明に関する基礎検討も可能であれば実施する.
本研究で実施する実験のほとんどは,細胞培養系を用いた遺伝子導入実験,リポーターアッセイ,RT-PCR,免疫沈降法である.これらの実験には,伝子導入試薬:Mirus社LT1(1本約3万円).レポーターアッセイ:Promega社のDual luciferase assay Kit(1000回分10万円). RT-PCR:SYBR Green Kit(1反応1000円).抗体(1本約3-5万円)などを用いる予定である,また,本研究領域は,非常に進展が早いため,その情報収集を目的として,に本願学会およびアメリカ細胞生物学会に参加することで,研究の動向をさぐる.さらに,平成24年度は論文投稿を目標とする.
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巻: - ページ: 印刷中
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http://molmed730.org/