研究概要 |
近年,申請者は,がん抑制遺伝子である p53 が E2F1 への結合を介して Myeloid elf-1 like factor (MEF) の発現を転写レベルで抑制することを見出した(Taura M, Suico MA, et al., Nucl Acids Res. 2010).本研究では,MEF の発現制御機構の全容解明を究極の目的とし,近年,がん幹細胞における転写因子Hypoxia inducible factor-1 (HIF1)およびMEFの関与が示唆されていることに着目した.具体的には,HIF1およびMEFの両分子が相互に作用しうるかについての検討を行った.その結果,低酸素刺激は,MEF 発現をmRNAレベル,タンパク質レベルで誘導することが明らかになった.次に,本作用がHIF1を介した作用であるか否かを検討したところ,HIF1遺伝子導入量依存的に,MEFの発現量は上昇した.このとき,低酸素刺激誘導性のHIF1を介したMEFの発現上昇は,promoter活性の上昇に伴って引き起こされることも明らかになり,実際,HIF1は,MEF promoter領域に結合していることを見いだした.以上の結果より,MEFの発現量は,低酸素時にHIF1を介して転写レベルで調節されることがあきらかになり,今後は,本現象とがん幹細胞の機能維持がどのようにかかわりあうのかについて検討していく必要がある.
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