研究課題/領域番号 |
23590086
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
柳川 芳毅 北海道医療大学, 薬学部, 講師 (20322852)
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研究分担者 |
松本 眞知子 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (70229574)
富樫 廣子 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (20113590)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ストレスと免疫 / IL-33 / アドレナリン |
研究概要 |
ストレスと疾患との関係を分子レベルで解明し,それに基づく治療法を確立することは,ストレス社会と呼ばれる現代において,早急に取り組むべき課題であるといえる.免疫領域においては,ストレスがアレルギーの増悪や易感染性などに関係していると考えられているが,その詳細なメカニズムは不明である.こういった背景をもとに,我々は"免疫系と神経系で働く新しい分子機構の解明"を目的とする研究課題を立案した.本課題では,免疫反応の調節に重要な役割を果たしている樹状細胞に対するストレス関連物質(ノルアドレナリンやアドレナリン)の作用に着目した研究を進めている.この研究過程において我々は,ノルアドレナリンやアドレナリンがアレルギー増悪因子であるインターロイキン-33(IL-33)の発現を劇的に上昇させることを見出した(Yanagawa et al, Brain, Behavior, and Immunity 2011).ストレスによるアレルギー疾患の増悪については比較的広く認識されているが,そのメカニズムについてはほとんど解明されていない.今回の発見は,ストレスとアレルギー疾患との関係を解明する手がかりとなり,アレルギー疾患の新たな治療戦略につながる可能性がある.また,アドレナリンβ2受容体アゴニストは気管支ぜん息の治療に用いられるが,長期使用によって疾患を悪化させてしまうことが,最近のメタアナリシスによって示唆されている.本研究では,アドレナリンと同様に,β2受容体アゴニストがIL-33の発現を上昇させることを見出しており,このことが気管支ぜん息悪化のメカニズムとして考えられる.これらの成果は,Faculty of 1000 のPharmacology & Drug Discovery 部門に選出され,国際的にも高く評価されている.したがって,こういった観点からの研究を今後も進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では,"免疫系と神経系で働く新しい分子機構の解明"を目的としている.研究の進捗状況として,我々は,ノルアドレナリンやアドレナリンがアレルギー増悪因子であるIL-33 の発現を劇的に上昇させることを見出し高い評価を受けている(Yanagawa et al, Brain, Behavior, and Immunity 2011, Faculty of 1000に選出).また,その分子機構として,細胞内cAMPの上昇とプロテインキナーゼAの関与が示唆されている.さらに,この現象をヒントに我々は,炎症性メディエーターであるプロスタグランジンE2が,ノルアドレナリンやアドレナリンと同様に,樹状細胞におけるIL-33の産生を上昇させることを発見している(Yanagawa et al, Immunol Lett. 2011).こういった点においても,今回の発見は,アレルギー増悪因子IL-33の発現調節機構に着目した,アレルギー疾患の新たな治療戦略の開発につながる可能性がある.さらに,この現象は,ある条件下においてマクロファージにおいても認められることを確認している.したがって,現時点において我々は,ストレスに関連物質を介した自然免疫系における新たなサイトカイン産生制御機構を見出しており,本課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
現時点において我々は,アドレナリンβ2受容体を介したシグナルが,樹状細胞におけるIL-33の発現を劇的に上昇させることを見出している.最近,IL-33がアレルギー疾患などの様々な免疫疾患の増悪に関与していることが示されている.したがって,IL-33の産生制御機構を詳細に解析することは,アレルギー疾患に対する新たな薬物治療戦略につながると考えられる.そこで今後は,β2受容体を介したシグナルがどのような分子機構によってIL-33の発現を制御しているかについて解析する.また,β2受容体を介したシグナルは,単独ではIL-33の産生にほとんど影響を与えないが,LPS (TLR4 ligand) 存在下において,相乗的にIL-33発現を上昇させる.そこでこの相乗効果のメカニズムを分子レベルで解明する.さらに,IL-33産生そのものの他のサイトカイン産生に与える影響や他のサイトカインがIL-33産生に与える影響についても解析する.このβ2受容体シグナルによるIL-33産生増強効果はマクロファージ細胞株においても確認されている.したがって,IL-33産生制御機構における分子レベルでの解析には,抗体や阻害剤を用いた実験に加え,siRNA用いた特異的遺伝子ノックダウンによる解析も可能であり,現在検討中である.
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次年度の研究費の使用計画 |
本件研究課題遂行に必要な,樹状細胞やマクロファージを十分得るためには,多数のマウスを必要とする (動物購入費および動物飼育費).さらに,マウス in vivoにおけるIL-33産生制御機構についても解析する必要がある(動物購入費および動物飼育費).樹状細胞およびマクロファージにおける β2受容体刺激にともなう遺伝子発現の変化とLPS刺激による影響をマイクロアレイ法により網羅的に解析する予定であり,マイクロアレイによる解析費用が必要となる.また,樹状細胞およびマクロファージを培養するための培養器具が必要である.サイトカイン産生の解析は,ELISA法によって行う予定であるが,そのための抗体およびプレートや発色試薬が必要となる.細胞表面マーカーの解析には種々の蛍光標識抗体が必要である.分子レベルでの解析には分子生物学用の試薬が必要であり,特にsiRNAのノックダウンには,siRNAやトランスフェクション試薬の購入が必要である.また,学会等における成果発表のための旅費を必要とする.
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