研究課題/領域番号 |
23590087
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
高橋 美樹子 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (90324938)
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研究分担者 |
多田 周右 帝京平成大学, 薬学部, 教授 (00216970)
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キーワード | 中心体 / 中心体複製 / 細胞周期 / 分裂期 |
研究概要 |
中心体は、分裂期の双極紡錘体を形成するために細胞周期につき1回だけ複製される必要がある。これは、細胞分裂終了時に起こる中心小体の構造変換を経ない限り、中心体複製を開始できない、というライセンシング機構により制御されている。このライセンシング機構に蛋白質分解酵素separaseが必要であることが知られ、その基質候補として中心体蛋白質kendrinを見出し解析を行ってきた。 平成24年度は、kendrinが中心体におけるseparaseの新規基質であり、その限定分解と中心体からの解離が中心小体の構造変換とそれに続く中心体複製開始に必要であることを論文として公表した。さらに、separaseの中心体における活性化→kendrinの限定分解と中心体からの解離→中心小体の構造変換→中心体複製開始に至る分子機構の解明を目指して下記の取り組みを行った。 1.中心体におけるseparaseの活性化とkendrinの限定分解の時間的空間的関係を明らかにするため、センサーとして機能しうる蛋白質を発現させ、ライブイメージングで観察を行った。中心体における蛍光の消失によりseparase活性化を検出することを期待したが、完全な消失を判定することが難しく、実験系の改良を続けている。 2.中心体における詳細な免疫蛍光染色解析から、kendrinが母中心小体を円筒状に取り囲んで局在することを見出し、中心小体の構造変換に直接関わる可能性も示唆された。 3.中心小体の構造変換のタイミングを可視化する試みとして、構造変換に伴い免疫蛍光染色で1点から2点に変化する中心体蛋白質を蛍光蛋白質と融合させて発現し、ライブイメージング観察を行い実験系として使えることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度末にキャンパスの移転がありその引越準備等で約2か月間研究を実施できなかったため、影響は受けたものの、第1に目的としていたkendrinがseparaseの基質として中心体複製ライセンシングに関わることは明らかすることができた。その次の段階として、中心体におけるseparase活性化のモニターを試み、さらにkendrinの限定分解と中心体からの解離以降の分子機構解明のために、中心小体の構造変換や複製開始に関わる蛋白質のcDNA、発現ベクター、特異抗体の準備などは着実に進めてきている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究結果および準備状況に基づき、中心体におけるseparase活性化からkendrinの限定分解、中心小体の構造変換、中心体複製開始に至る分子機構を解析する。 1.ライブイメージングや免疫蛍光染色により中心体で上記イベント群の起こる時期を詳細に明らかにする。さらにその結果をこれらの過程に関わる候補分子特定の手掛かりとする。 2.中心体複製の開始に関わる分子の中心体へのリクルートや複合体形成に、kendrinの限定分解、解離、中心体への再局在が関与する可能性を、蛋白質リン酸化酵素の関与も含めて検討する。 3.kendrinの分裂期前期(separaseによる限定分解を受ける前)における高リン酸化の意義を、中心小体構造変換に関わるもう一つの酵素Plk1との関係も含め、明らかにする。また、kendrinの限定分解で生じる比較的安定なアミノ末端側断片の、細胞分裂期からG1期にかけての機能についても検討する。 これらの解析より、正常な細胞増殖を担う中心体複製の制御機構解明への一助となることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、海外の学会参加を取りやめたことと、年度末のキャンパス移転に伴う引越により研究が実質的に2か月以上停止していたためである。 次年度は新しい実験室で、成果を挙げられるよう努めるつもりである。また、リン酸化アッセイ等、蛋白質リン酸化酵素の関与について検討するため、新たに研究分担者を迎えている。海外出張については学事日程と調整中であり、その他はおおむね計画通りに使用する予定である。
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