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2011 年度 実施状況報告書

テネイシン由来のインテグリン活性化ペプチドによる細胞の悪性化とその分子機構

研究課題

研究課題/領域番号 23590090
研究機関東京理科大学

研究代表者

深井 文雄  東京理科大学, 薬学部, 教授 (90124487)

研究分担者 伊豫田 拓也  東京理科大学, 薬学部, 助教 (80465715)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードインテグリン / 細胞接着 / 細胞増殖 / 悪性転換 / テネイシン / PDGF / がん
研究概要

平成23年度は以下の検討を行った。1)細胞死抵抗性獲得機構:TNIIIA2はNIH3T3の脱着性細胞死アノイキスを強く阻害する。TNIIIA2のこの作用が、beta1インテグリンの活性化に起因することを証明した。またこのアノイキス抑制には、主要な細胞生存シグナル分子であるAktの活性化とアポトーシス抑制性タンパク質Bcl-2の発現上昇が関与することが明らかになった。2) 過増殖能獲得機構:TNIIIA2がPDGF依存性細胞増殖を過度に促進する分子機構を解析した。TNIIIA2は、PDGF受容体/Ras/MAPキナーゼ(ERK1/2)経路を過度に活性化して増殖を刺激することが示された。これらの活性化は細胞膜上に置けるraft/caveolaに依存しており、TNIIIA2はPDGF受容体とβ1インテグリンを細胞膜raft/caveola内に集積させて活性化した巨大複合体形成を誘導し、これによって過剰な活性化シグナルを発生させることが明らかになった。3) Focus形成誘導機構:TNIIIA2はNIH3T3のfocus形成を誘導することから、細胞の悪性転換作用が疑われた。そこで、発がんプロモーター活性の有無をin vitro試験系により解析した。Balb3T3にv-Ha-rasを導入した細胞株Bhas 42を用いた試験により、テネイシンCに弱くTNIIIA2では明らかな発がんポロモーション活性が検出された。本結果は、悪性腫瘍部位で高発現するテネイシンCの発がんへの直接的関与を示した初めての結果である。                                                       以上、腫瘍部位で高発現するテネイシンCがTNIIIA2機能を介して細胞死に対する抵抗性や過剰増職能など悪性形質を付与する可能性が明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

テネイシンCを分子標的とする抗悪性腫瘍薬開発の基礎的研究として、いかに示す4つの研究項目を計画した。1)細胞死抵抗性獲得機構,2)過増殖能獲得機構,3)Focus形成誘導機構,4)上皮-間葉転換作用。これらのうち、1)~3)については、上記のように当初の研究計画を終了している。すなわち、テネイシンCはその分子内のTNIIIA2機能部位のインテグリン活性化作用を介して細胞の細胞死に対する抵抗性や過剰な増殖能を獲得すると共に、発がんプロモーション作用を発現する可能性が示された。 以上の知見は、テネイシンCを高発現する悪性腫瘍の新たな治療標的として、TNIIIA2機能部位が重要であることを示すものである。当初の計画以上に伸展していると自負している。

今後の研究の推進方策

残る課題として、「TNIIIA2の上皮ー間葉に及ぼす作用」を解析するが、この「上皮ー間葉転換」は、腫瘍細胞が浸潤/転移転移能を獲得する上で極めて重要な機能であり、これを解決することで我々の仮説が更に強固に証明されると考えている。その結果を得た上で、当初は予定していなかったが、テネイシンCを高発現する悪性腫瘍である乳がん、および治癒率が極めて低い脳腫瘍である神経膠芽腫に焦点を絞り、それらの増殖、浸潤、転移におけるTNIIIA2の役割についてin vitro 研究を展開したいと考えている。従って、できれば2年で研究を完了し、「乳がんと神経膠芽腫の治療法の開発に向けた基礎的検討」という新たな課題として、再スタートをさせて頂ければと考えている。

次年度の研究費の使用計画

上記の研究計画を全うするため、高価な試薬類(カスタムペプチド、抗体類、培養用試薬類、培養用器具類)の購入に充填したい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Eukaryotic translation elongation factor 1A induces anoikis by triggering cell detachment.2012

    • 著者名/発表者名
      Itagaki, K.,
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 287 ページ: 16037-16046

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Modulation of tumor cell survival, proliferation, and differentiation by the peptide derived from tenascin-C.2012

    • 著者名/発表者名
      Iyoda, T., and Fukai, F.
    • 雑誌名

      Int. J. Cell Biol.

      巻: 2012 ページ: ID 647594-604

  • [学会発表] Cell Regulation by Cryptic Functional Sites in Fibronectin and Tenascin-C Molecules2011

    • 著者名/発表者名
      Fumio Fukai
    • 学会等名
      10th Osteopontin Meeting(招待講演)
    • 発表場所
      Hokkaido University
    • 年月日
      June 19, 2011
  • [図書] Cell regulation through membrane raft/caveolae in Electrical Phenomena at Interfaces and Biointerfaces: Fundamentals and Applications in Nano-, Bio-, and Environmental Sciences2012

    • 著者名/発表者名
      Yohei Saito, Toshiyuki Owaki, and Fumio Fukai
    • 総ページ数
      in press
    • 出版者
      John Wiley & Son

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公開日: 2013-07-10  

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