研究概要 |
本研究では感染細菌の宿主適応のメカニズムの解析を目的としている。そのために特に外膜構成成分であるリポポリサッカライドに着目し、LPSリモデリングの感染応答での役割を解明すると同時に、宿主のLPS認識機構を明らかにすること目的としている。 まず、LPSのリピドA修飾酵素LpxRによる脱アシル化修飾をされたリピドAを精製してその活性を非修飾型リピドAおよびLPS合成酵素LpxM欠損株から得られる生合成中間体リピドAと比較したところ脱アシル化リピドAは非修飾型リピドAよりも活性は低いが、生合成中間体よりも活性が高いことがわかった。 宿主のリピドA認識応答機構を解明するために、LPS認識と並行して起こる貪食に着目して貪食がLPS刺激伝達に与える影響を解析した。LPS刺激によってマクロファージ様培養細胞株からサイトカインが分泌されるが、その際にラッテックスビーズを貪食させるとTNFα、IL-1βの分泌が増強するがIL-6の分泌増強は認められなかった。貪食シグナルがLPSシグナルを選択的に増強する可能性がある。 グラム陰性菌は外膜を起源とする外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)を分泌する。OMVはLPSなどの脂質、様々な病原性タンパク質、薬剤耐性などの遺伝物質としての核酸、などを含むことが知られており、細菌の病原性に関わる。このOMV生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。W3110株の場合、鞭毛成分が含まれることが特徴であった。鞭毛タンパク質欠損株ではOMV形成が減少することから鞭毛形成がOMV形成に関連していると考えられた。
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