研究課題/領域番号 |
23590096
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
井上 晴嗣 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (70183184)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体分子 / 蛋白質 / 生理活性 |
研究概要 |
LRGノックアウトマウスの表現型に関連して、ケージ交換などの刺激によって、強直間代発作などのてんかん様症状を示すノックアウトマウスが何匹か見られた。LRG遺伝子のノックアウトとてんかんが関連しているのか調べるため、野生型、ヘテロ体、ホモ体の各マウスで、Pentylenetetrazole(PTZ)に対する感受性に違いがあるのか、現在検討している。また、野生型とLRGノックアウトマウスの血清について、蛍光標識二次元ディファレンシャルゲル電気泳動(2D-DIGE)による解析を行ったところ、IgGに由来するスポットにおいて顕著な発現量の違いが見られた。そこで野生型、ヘテロ体、ホモ体の各血清中のIgG量をELISAで定量したが、個体によるIgG量のバラツキが多く、明確な違いは確認できなかった。好中球の機能にLRGが関与するのかどうかを明らかにするため、野生型、ヘテロ体、ホモ体のマウスからそれぞれ好中球を採取した。それぞれの好中球にCyt cを添加し、好中球細胞外トラップ(NETs)形成に違いがあるかどうか調べたが、NETs形成にはCyt cとLRGは関与しないことがわかった。また、Cyt cに対する好中球の遊走活性は見られず、好中球の脱顆粒反応にもCyt cは関与しないことがわかった。野生型、ヘテロ体、ホモ体の各マウスに、1週間Cyt cを腹腔内投与し、骨髄細胞中の免疫細胞をFACSを用いて解析した。その結果、野生型に比べてヘテロ型、ホモ型では骨髄細胞中の好中球の割合が減少していた。また、LRGノックアウトマウスの骨髄細胞では野生型マウスの骨髄細胞に比べて、IL-6,TNFα, MCP-1などの炎症性サイトカイン遺伝子が2倍以上多く発現していることがわかった。しかし、Cyt cを添加してもこれらの発現に影響をあたえないことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LRGとCyt cの相互作用に関して、複合体のアセチル化によって結合しているLys残基を同定する方法は間接的な証明となるので、より直接的な方法に変更することにした。すなわち、大腸菌でLysをAlaに置換した変異型Cyt cを作製し、この変異型Cyt cとLRGとの相互作用を直接Biacoreで調べることにより結合に関与するLys残基を同定する方法である。ヒトCyt cを発現する大腸菌発現系は確立したが、変異Cyt cの作製と精製に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
最近、LRGが血管新生に関与し、LRGの抗体やアンタゴニストが増殖性糖尿病性網膜症などの血管形成異常疾患の治療薬になるいう国際特許が申請されていることを知った。そこで、LRGが実際に血管新生に関与しているのかどうか調べるとともに、血管新生に及ぼすCyt cの影響を調べていきたい。また、LRGがてんかんの発症と関係しているのか、PTZに対する感受性を調べるとともに、てんかん症状を示すLRGノックアウトマウスの脳組織を観察し、てんかんの原因を調べていきたい。LRGとCyt cの相互作用については、大腸菌で作製した変異型Cyt cとLRGの相互作用をBiacoreで調べて、結合に関わるLys残基を同定する予定である。また、昨年度に引き続き、Cyt cがDanger Signalとして免疫系細胞に作用するかどうか調べていきたい。具体的には、Cyt c存在下で野生型およびノックアウトマウス由来の骨髄細胞を培養し、FACSで解析することによって免疫細胞の種類や分布がどのように変化するか調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費はすべて消耗品費に充てる。具体的には、一般試薬の他、ELISAおよびウェスタンブロット検出試薬、各種抗体、リアルタイムPCR用試薬、合成ヌクレオチド、制限酵素などの分子生物学研究用試薬、各種細胞、細胞培養用培地、ウシ胎仔血清などの細胞培養用試薬、細胞培養用ディッシュ、マイクロプレート、チップ、マイクロチューブなどのプラスチック器具、ビーカー、メスシリンダー、試験管などのガラス器具の購入、LRGノックアウトマウスの維持に必要な経費などに充てる。
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