研究概要 |
野生型マウスとLRGノックアウトマウスに、ウマCyt cを腹腔内に投与した。その結果、Cyt cの投与により、野生型マウスでは骨髄細胞中の好中球の割合が増加したが、LRGノックアウトマウスでは好中球の増加は認められなかった。このとき、血清中のG-CSFをELISAで定量することにより、骨髄細胞中での好中球の増加は血中G-CSF量の増加によると考えられた。また、Cyt cを投与したマウスの血清を、ウェスタンブロットにより解析したところ、血中Cyt cは野生型マウスでのみ検出され、LRGノックアウトマウスでは全く検出されなかった。このことは、LRGノックアウトマウスでは投与したCyt cは直ちに尿中に排泄されるが、野生型マウスではCyt cはLRGと複合体を形成することによって血中に維持されることを示す。すなわち、血中Cyt cはLRGと複合体を形成し、それがG-CSFの発現を促進し、好中球の増加を引き起こすシグナルとして機能すると考えられた。 また、大腸菌でヒトCyt cを発現するプラスミドpBTR1を用いて、ヒトCyt cのLys残基をそれぞれAlaに置換したpBTR1変異体を多数作製し、これらの変異体とヒトLRGとの相互作用をBiacoreで測定した。その結果、K8A, K13A, K72A, K73A, K79Aでは解離定数が大きくなり、LRGとの相互作用が低下することがわかった。特にK8Aの解離定数は265pM、K72Aは734pMとなり、これらのLys残基がAlaに置換すると、結合力がそれぞれ100倍以上弱くなることがわかった。以上の結果から、Cyt cの8位、13位、72位、73位、79位の正電荷がLRGとの相互作用に重要であり、これらの残基はCyt cの露出したヘムcを取り囲む領域に位置しているので、この領域にLRGが結合すると考えられた。
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