研究課題/領域番号 |
23590097
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
竹橋 正則 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (10378862)
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キーワード | 精子幹細胞 / ポリ(ADP-リボース) / 多能性幹細胞 / 発生・分化 / 再生医療 |
研究概要 |
前年度までの研究から、ポリ(ADP-リボース)合成酵素(PARP)の阻害剤によってポリ(ADP-リボシル)化を抑制したマウス精子幹細胞の培養系(GS細胞)では、p53の下流で働く複数の遺伝子の発現に変化があり、その増殖能の低下もしくは細胞死が起こっている可能性が考えられた。今年度は、shRNAによるポリ(ADP-リボシル)化の合成および代謝に関わる酵素の発現抑制系を用いて、精子幹細胞の増殖能および遺伝子の発現変化について解析した。その結果、ポリ(ADP-リボース)合成酵素の発現抑制によって、酵素阻害剤を作用させたときと同様の遺伝子の発現変化が見られた。このことは、精子幹細胞の増殖に与える変化が、用いた阻害剤の副作用によるものではなく、ポリ(ADP-リボシル)化が関与していることを示唆した。また、PARP阻害剤によるポリ(ADP-リボシル)化阻害がp53にどのように影響しているかを調べるため、種々のリン酸化抗体を用いたウエスタンブロット法を用いた解析を行った。コントロールとして用いた神経幹細胞において(ポリ(ADP-リボシル)化阻害によって同様に増殖が抑制されることを明らかにしている)p53のリン酸化に変化が生じることを明らかにし、精子幹細胞についても、同様に解析を進めている。さらに、p53の関与の証明するために、shRNAによるp53の発現を抑制した精子幹細胞の培養系を構築した。この細胞に対して、ポリ(ADP-リボシル)化阻害が与える影響を次年度に解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
精子幹細胞の増殖にポリ(ADP-リボシル)化が関与することを、その合成酵素の阻害剤だけではなく、shRNAによる発現抑制系でも確認できた。また、ポリ(ADP-リボシル)化の抑制がp53の活性化に影響を与えていることを示唆する結果や、今後それを証明するための、shRNAによるp53の発現制御系精子幹細胞を構築できたので、研究目的に沿っておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ポリ(ADP-リボシル)化阻害による精子幹細胞の増殖抑制にp53が関与している可能性について、さらに詳細に解析する。構築したshRNAによるp53の発現制御系精子幹細胞に対して、ポリ(ADP-リボシル)化阻害が与える影響について解析し、野生型の精子幹細胞で見られた増殖抑制などの変化がレスキューされるかを調べる。同時に、エピジェネティック修飾の変化についても解析する。また、構築できているshRNAによるポリ(ADP-リボシル)化の合成および分解酵素の発現抑制系精子幹細胞を用い、ポリ(ADP-リボシル)化の阻害および亢進が、p53のポリ(ADP-リボシル)化やリン酸化に与える影響を、免疫沈降、ウエスタンブロット法および免疫染色法などによって解析する。これらの解析を総合的に評価し、精子幹細胞におけるポリ(ADP-リボース)代謝の役割について、とくにp53について着目し明らかにする。その知見をまとめ、学会および論文発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じたのは、実験補助のために予定していた謝金を今まで使用しなかったためである。この研究費と次年度請求する研究費を合わせて、主に細胞培養および一般研究用の試薬、培養用のプラスチック器具などの消耗物品費に使用し、一部、実験補助のための謝金、成果発表のための旅費および投稿料などに使用する予定である。
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