研究課題/領域番号 |
23590099
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
高橋 悟 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (20268098)
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研究分担者 |
杉山 晶規 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (40260319)
佐藤 圭創 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (00315293)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アンギオスタチン / 受容体 / 血管内皮細胞 / eNOS / COX-2 |
研究概要 |
血管新生抑制因子アンギオスタチンの新規受容体gp130の役割について、以下の知見を得た。VEGF刺激の血管内皮細胞HUVECのNO産生促進、COX-2発現誘導および遊走促進に対するアンギオスタチンの抑制作用において、gp130の仲介を検討した。gp130をRNAiでノックダウンしたHUVECの細胞応答を解析した。VEGFの効果にはほとんど影響がみられなかった。VEGFの促進効果に対するアンギオスタチン効果のうち、COX-2誘導抑制効果はみられたが、NO産生抑制作用および遊走抑制作用は消失した。以上のことから、gp130はアンギオスタチンのNO産生抑制作用および遊走抑制作用に関与することが判明した。VEGF刺激により発生する活性酸素種については、蛍光指示薬によるアッセイでは明確な同定ができなかった。アンギオスタチンのアポトーシス誘導作用は高濃度で認められたが、大量のアンギオスタチンが必要な実験系のため遅延している。gp130のアンギオスタチン結合ドメイン解析では、gp130の細胞外領域を細分化しGST融合タンパク質を作成した。pull down法により、アンギオスタチン結合領域を細胞外ドメインの中央部に見出した。このアミノ酸配列を既知のアンギオスタチン受容体の配列と比較したところ、相同性はほとんどみられなかった。一方、gp130のフォンビルブラント因子様構造の機能解析では、細胞へのDNA導入に苦労しており遅延している。gp130の細胞内領域の解析については、細胞内領域をベイトとしたベクターを作成し、酵母two hybridスクリーニングでヒト胎盤ライブラリーの探索を開始した。二次スクリーニングから候補分子がいくつか見出されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的に概ね計画に従って進行している。計画の根本的な変更はないが、多少の遅延部分がある。gp130の役割の解析については、多くは研究計画どおりに進行し、成果が得られた。ただ、活性酸素産生の抑制作用とアポトーシス誘導作用の検討では、遅延が生じている。活性酸素種の検討においては、蛍光指示薬による簡便な方法で測定しづらく、ESRに機器変更していることが主な理由である。アポトーシス誘導の検討については、予想以上に大量のアンギオスタチンが必要なため、遺伝子工学的にアンギオスタチン作成系を構築することに時間を要したことが主な理由である。gp130の細胞外ドメイン構造の解析については、アンギオスタチン結合領域は計画どおりにほぼ解明できたが、フォンビルブラント因子様構造の機能については検討が進んでいない。その大きな理由として、改変DNAの作成はある程度できたが、改変プラスミドの細胞への導入がうまくいかず、アデノウイルスにベクターを変更しているためである。プラスミドの作成や扱いには慣れているが、アデノウイルスをはじめて扱うため時間がかかっていることも、研究の進行を遅延させている。gp130の細胞内領域と相互作用する分子の検討では、計画どおりに酵母two hybridスクリーニングを行った。二次スクリーニングから候補分子がいくつか見出されている。ただし、二次スクリーニングのアッセイが不安定であったため、再度二次スクリーニングを継続している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果に基づいて、研究計画に従い、アンギオスタチンのeNOS活性化およびCOX-2誘導に対する抑制作用の細胞内機序を検討する。eNOS活性化の抑制経路にはgp130が関与するので、eNOS活性化経路のどこが抑制されるかを上流に探索し、gp130とのつながりを見出す。一方、COX-2誘導抑制へのgp130の関与はみられないが、抑制経路を解析し、他の受容体との関連を検討する。アポトーシス誘導作用とgp130の関連は、アンギオスタチンの多量生産が可能になったので、上記と同様に検討を進める。アンギオスタチンの活性酸素種の産生に対する効果については、ESRを使用し微量の活性酸素種の同定と、抑制作用の有無について検討する。gp130のフォンビルブラント因子様構造の機能については、改変アデノウイルスの作成を継続し、作成でき次第、アンギオスタチン刺激により作用が発現するかを検討する。それにより、6つ存在するフォンビルブラント因子様構造の機能を明らかにする。gp130の細胞内領域と相互作用する分子の検討では、酵母two hybridスクリーニングの二次スクリーニングで挙がってきた陽性の候補分子について、引き続き確認を行う。ベイトとの相互作用が確認されれば、cDNA配列の解読からタンパク質を同定する。それらの全長cDNAをPCRクローニングし、細胞にgp130と共発現させ、タンパク質レベルでの相互作用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に機器を購入したが、次年度の購入はない。実験を遂行するために、多くは試薬や器具の消耗品費として使用する(105万円)。また、研究費の一部は、研究成果を学会で発表するために旅費(10万円)を、論文で公表するために投稿料(5万円)を申請する。
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