研究課題/領域番号 |
23590099
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
高橋 悟 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (20268098)
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研究分担者 |
杉山 晶規 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (40260319)
佐藤 圭創 九州保健福祉大学, 薬学部, 教授 (00315293)
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キーワード | アンギオスタチン / 血管内皮細胞 / 受容体 / eNOS / COX-2 |
研究概要 |
昨年度のSub 1から、血管内皮細胞HUVECにおいてアンギオスタチンASはVEGF刺激のNO産生促進や遊走促進を抑制するが、これらにはAS新規受容体gp130が大きく関与すること、またASはVEGF刺激のCOX-2発現誘導を抑制するが、これにはgp130が一部関与することが見出された。これらについて、抑制経路の機序解明を行った。NO産生では、eNOSの活性化においてHSP90はチロシンリン酸化されeNOSへ結合することが重要であるが、ASはこの過程を阻害した。ここでgp130からのシグナルは、VEGFによるSrc活性化やSrc依存性のHSP90チロシンリン酸化には影響を与えないが、リン酸化HSP90のeNOSへの結合を抑制することが判明した(Sub 4)。COX-2誘導ではJNKやp38の活性化が関与するが、ASはこれらのキナーゼの活性化を抑制した。ここでgp130からのシグナルは、p38経路には影響を与えないが、JNK活性化を抑制することが判明した(Sub 5)。さらに、ASのアポトーシス誘導作用については、カスパーゼ9の関与が見出された(Sub 1)。一方、遅れていたSub 1のVEGF刺激の活性酸素の産生に対するASの効果とp130の関与について検討したが、ASの明らかな抑制効果は認められなかった。Sub 2のvW様ドメイン改変体は、作成あるいは発現が困難であり、予想通りには進んでいない。Sub 3については、細胞内領域をベイトとし酵母two hybridスクリーニングでヒト胎盤ライブラリーの探索を行ったところ、転写因子、アポトーシス関連因子などが見出された。Sub 1との連携から、特にアポトーシス関連因子がASやgp130と関連するか、さらに検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的には昨年度の遅れを取り戻し、計画に近い進行状況であり、ASの作用を仲介するgp130の役割に多くの成果が出ている。また、gp130からのシグナルに関与する未知の分子の探索も進み、特にアポトーシス関連分子に興味ある候補が見出された。 検討結果がネガティブな項目(活性酸素の産生抑制)については計画の変更はやむをえず、その先の検討は行わない。gp130の細胞外ドメイン構造の解析については、アンギオスタチン結合領域は計画どおりにほぼ解明できたが、vW因子様構造については難航している。その大きな理由として、改変DNAの作成はできたが、改変プラスミドの細胞への導入がうまくいかず、アデノウイルスにベクターを変更しているためである。プラスミドの作成や扱いには慣れているが、アデノウイルスをはじめて扱うため時間がかかっていることも、研究の進行を遅延させている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度までの成果に基づいて、ASのeNOS活性化およびCOX-2誘導に対する抑制作用、ASのアポトーシス誘導作用の細胞内機序を検討する。eNOS活性化の抑制経路には、gp130からのシグナルがHSP90のeNOSへの結合を阻害するので、この過程に関与しうる分子を検討する。また、COX-2誘導抑制には、gp130が一部関与し、JNK活性化を阻害するシグナルがあるため、上流のキナーゼやホスファターゼを検討する。これらの分子を探索し、gp130とのつながりを探り、解明を進める。 酵母two hybridスクリーニングから見つけられたアポトーシス関連分子についても、gp130とのつながりを探り、AS作用における役割などの解明を進める。 gp130のvW因子様構造の機能については、改変アデノウイルスの作成を継続し、作成でき次第、アンギオスタチン刺激により作用が発現するかを検討する。それにより、6つ存在するフォンビルブラント因子様構造の機能を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の機器購入はない。実験を遂行するために、多くは試薬や器具の消耗品費として使用する(80万円)。また、研究費の一部は、研究成果を学会で発表するために旅費(10万円)を、論文で公表するために投稿料(10万円)を申請する。
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