研究課題/領域番号 |
23590100
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研究機関 | 姫路獨協大学 |
研究代表者 |
柴田 克志 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (70296565)
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研究分担者 |
白木 孝 姫路獨協大学, 薬学部, 准教授 (10294208)
酒井 伸也 姫路獨協大学, 薬学部, 助手 (30525077)
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キーワード | 分子シャペロン / アグレソーム / 細胞周期 / 上皮間葉転換 |
研究概要 |
プロテオミクス解析により、分子シャペロンであるHsp60、Hsp70がWW45の新規結合蛋白である事を見出した。本研究では、分子生物学的・プロテオミクス技術を駆使して、WW45-Hsp60あるいはWW45-Hsp70複合体形成の分子メカニズムならびに、分子シャペロンによるWW45の細胞生理機能の制御機構を明らかとする事を第一の目的としている。平成24年度は、WW45をノックダウンさせた各種がん細胞(MCF7、MDA-MB-231、Hela細胞)あるいは非がん細胞(MCF10A細胞)を作製し、細胞周期解析、細胞増殖能、アポトーシス誘導、EMT(上皮間葉転換)誘導性などの細胞生物学的特性の解析を主に行った。その結果、がん細胞ではWW45遺伝子のノックダウン細胞とコントロール細胞では、細胞周期分布、細胞増殖能および薬剤処置によるアポトーシス誘導において有意な差を認めなかった。一方、MCF10Aなどの乳腺上皮由来の非がん細胞においては、WW45遺伝子をノックダウンさせる事によりコントロール細胞に比し細胞密度依存的な細胞増殖阻害が抑制された。この結果は、Hippo-Salvador-Warts情報伝達系が、非がん細胞の細胞増殖接触阻害において重要な役割を担っている可能性を示している。また、Hippo-Salvador-Warts情報伝達系の効果分子であるタンパク質キナーゼMst1/2やYAPのリン酸化の程度は、WW45遺伝子のノックダウン細胞とコントロール細胞とで有意な差がなく、非がん細胞では接触阻害に関与する、Hippo-Salvador-Warts情報伝達系の新たな効果分子が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は当初の実験計画を若干修正し、sh-RNAを用いて各種がん細胞のWW45遺伝子ノックダウン細胞を作製し、細胞周期、細胞増殖能、EMT誘導、アポトーシス誘導などの細胞機能を詳細に解析中である。がん細胞ではこれらの細胞生物学的特性は、WW45遺伝子のノックダウン細胞とコントロール細胞とで有意な差を認めなかった。そこで、非がん細胞を用いてWW45遺伝子のノックダウン細胞を作製し、がん細胞と同様に解析したところ、WW45遺伝子のノックダウン細胞ではコントロール細胞に比べ細胞増殖の接触阻害が抑制されるという新たな知見を見出した。研究計画は当初の計画よりやや遅れているものの、これまで見出した新たな知見に基づき、H25年度は研究を加速させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、前年度に見出した新たな知見に基づき研究計画を加速させる予定である。我々は非がん細胞の接触阻害において、Hippo-Salvador-Warts情報伝達系が重要な役割を担っている事を細胞レベルで見出した。非がん細胞のWW45遺伝子ノックダウン細胞をヌードマウスに移植し、腫瘍形成能および転移能を個体レベルで解析する予定である。また、当初の予定通り、1 電子顕微鏡を用いてWW45、Hsp60ならびにHsp70の細胞内局在変化の詳細を解析する。2 WW45遺伝子のノックダウン細胞とコントロール細胞とで細胞生物学的特性に差が認められた、MCF10A(非がん細胞)に注目し、Hippo-Salvador-Warts情報伝達系の新たな効果分子を見出す事を目的とした実験を開始する。3 ドメイン構造に基づき、WW45、Hsp60 ならびにHsp70の各種変異体を作製し、WW45との結合ドメインを決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は試薬などの消耗品に使用する他、実験進捗状況によっては技術補佐員の人件費に充当する予定である。大型設備備品の購入の予定はない。
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