研究課題/領域番号 |
23590106
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
村山 俊彦 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90174317)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | セラミド / セラミド代謝 / セラミド-1-リン酸誘導体 / アラキドン酸 / ホスホリパーゼA2 / 肺線維症 |
研究概要 |
平成23年度は,交付申請書に記載した以下の3つをそれぞれ行った.1)cPLA2α活性に対する新規合成セラミド,ceramide-1-phosphate (C1P) 誘導体の網羅的解析を行った.一群の新規化合物から,2つのエチル基を有するセラミドC2-diethyl-C1Pが,低分子量の分泌型PLA2活性には変化を与えず,細胞質型のcPLA2α活性を特異的に阻害することを見いだした. 2)セラミド代謝酵素に対する上記誘導体の解析を行った.セラミダーゼ,セラミドキナーゼなど各種のセラミド代謝酵素に対する上記誘導体の活性を測定したが,これまでのところ大きな活性変化を示す誘導体が見いだされていない. 3)肺線維化モデル細胞でのアラキドン酸代謝,セラミド代謝異常の解析と新規合成セラミド,ceramide-1-phosphate (C1P) 誘導体の薬理作用の解析を行った.ヒト胎児肺線維細胞(HFL1 cells, human fetal lung fibroblasts)をサイトカインTGFβ1共存下で培養し線維化特異的蛋白質α-smooth muscle actin (αSMA) 発現が増大している肺線維化モデル細胞を作成した.このモデル細胞では,sphingosine-1-phosphate (S1P) 生成が亢進し,S1P3受容体の発現上昇と同受容体を介したαSMA発現が見られた.さらにS1P1受容体を介してcPLA2α-arachidonic acid-COX-prostaglandin系が作動しαSMA発現が抑制されており,S1Pによる二重支配が観察された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請に記載した3つの研究実施計画は順調に進展している.特に,第1の計画に関しては,cPLA2α活性を特異的に阻害する新規誘導体の同定に成功し,新しいタイプの同酵素阻害剤の開発に大きな手がかりを与えたと考えている,本研究の内容は,現在,英文国際誌への公表を目指して論文作成中である. 第2の計画であるセラミド代謝酵素系に対するセラミド誘導体,セラミド-1-リン酸誘導体の活性評価は次年度も継続して行う予定である. 第3の研究実施計画である肺線維化モデル細胞を用いた研究に関しては新しい知見が得られた.特にS1Pによる線維化蛋白質αSMA発現の二重支配を明らかにできたことは,治療・予防薬開発の上からも意義深いと評価している.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,平成23年度に得られた成果をもとに,1)~3)の研究を継続発展させる.特に,2)の各種のセラミド代謝酵素活性を制御できる化合物の探索を,合成化学研究室西田教授のグループと連携しながら,細胞レベル,酵素レベルで進める.また,当初の研究計画に従って第4の研究テーマとして.炎症性疾患や肺線維症のモデル細胞やモデルマウスを作成し疾患組織などでのセラミド・アラキドン酸代謝異常の検出などをスタートさせる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に交付された助成金は100%使用した.次年度平成24年度では,直接経費の交付予定額合計 1,200,000円に対して,以下の内訳の使用計画を予定している. 物品費1,020,000円; 旅費80,000円; 人件費・謝金50,000円; その他50,000円.
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