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2011 年度 実施状況報告書

中枢神経系におけるシアル酸の病態生理学的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23590108
研究機関熊本大学

研究代表者

久恒 昭哲  熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (50347001)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードシアル酸 / ミクログリア / シアリダーゼ / 炎症
研究概要

1)培養細胞に対するシアル酸の影響:ミクログリアは、種々の刺激に応じて炎症性因子の産生や、死細胞の貪食などにより、脳内の環境を整える役割を担っている。そこでミクログリアの機能に対するシアル酸もしくはシアル酸関連分子作用について、炎症性因子の発現を指標に検討した。マウスミクログリア系細胞株BV-2細胞に対してシアル酸を作用させたところ、シアル酸の単独処理、およびLPSとの共処理では、各種炎症性因子の一過性の発現には影響なかった。一方で、細胞膜上の糖複合体に付加されているシアル酸の切断遊離がミクログリアの機能に及ぼす影響について検討した。BV-2細胞をシアリダーゼ処理により細胞膜上シアル酸の切断遊離を行った結果、炎症性因子の発現が亢進した。また、シアリダーゼ酵素阻害薬DANAによってその反応は消失した。ところが、脱シアル酸ではalternative activation型のマーカー遺伝子の発現は全く亢進せず、貪食能は低下した。従って、シアリダーゼによる脱シアル酸によってclassical activation型状態のミクログリアへと活性化されていることが示唆された。2)動物個体に対するシアル酸の影響:パーキンソン病などの中枢疾患では、ミクログリアの活性化を伴う炎症性反応が観察される。そこで、培養細胞の結果を踏まえて、脳内における脱シアル酸化が各種細胞に対してどのように影響するか検討した。シアリダーゼの脳内微量投与の結果、球状の形態を示すミクログリアが多数観察され、そのほとんどがiNOS陽性であった。さらに、神経細胞数は有意に減少した。このミクログリアにおける変化は、シアリダーゼ阻害薬DANAによって阻害された。これらから、ミクログリアにおける脱シアル酸化は、実際の脳内においてもミクログリアを活性化させ、その結果として神経細胞が障害する可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミクログリアにおけるシアル酸およびシアル酸関連分子の関与についてスクリーニング的な解析を行い、興味深い結果を得た。さらに、神経細胞の機能に対するシアル酸の影響についても現在検討中であり、興味深い結果を得ていることから、培養細胞におけるシアル酸の関与については、計画に沿って概ね順調に推移していると考えている。一方、vivoでの検討では、非疾患モデル動物を用いてシアル酸関連分子の影響について検討し、興味深い結果を得ることができた。疾患モデルにおけるシアル酸の作用については、現在その条件検討を行っていることから、動物を用いたシアル酸の関与についても、計画に沿って概ね順調に推移しているを考えている。

今後の研究の推進方策

1)培養細胞に対するシアル酸の影響:神経細胞の機能に対するシアル酸およびシアル酸関連分子の作用およびそのメカニズムについて、検討する。また単一細胞系のみならず、ラット仔脳より調製した脳切片スライス培養系を用いて、諸種細胞が混在する擬似的生体環境下における上記反応について検討する。2)動物個体に対するシアル酸の影響:疾患モデル動物に対するシアル酸の影響について、各種シアリダーゼ阻害薬を用い検討する。特にシアル酸の影響が顕著に認められた疾患モデルについては、内因性シアリダーゼ活性が著しく低いSM/Jマウスを用いて作製した疾患モデル動物との比較検討を行い、病態発現におけるシアル酸の関与について検討する。

次年度の研究費の使用計画

1)培養細胞に対するシアル酸の影響について全体の約6割を、2)動物個体に対するシアル酸の影響について全体の約3割を、3)学会参加などの旅費や論文投稿を含めた雑費として全体の約1割を使用する計画である。申請者の所属機関および所属研究室の保有する実験設備や機器を最大限活用し、無駄のない予算執行を行う予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Natural and synthetic retinoids afford therapeutic effects on intracerebral hemorrhage in mice.2012

    • 著者名/発表者名
      Matsushita H, Hijioka M, Hisatsune A, Isohama Y, Shudo K, Katsuki H.
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol. Mar 23.

      巻: . ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Caffeic acid phenethyl ester protects nigral dopaminergic neurons via dual mechanisms involving heme oxygenase-1 and brain-derived neurotrophic factor.2012

    • 著者名/発表者名
      Kurauchi Y, Hisatsune A, Isohama Y, Mishima S, Katsuki H.
    • 雑誌名

      Br J Pharmacol. Jan 6.

      巻: . ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1111/j.1476-5381.2012.01833.x.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Orexin neurons in hypothalamic slice cultures are vulnerable to endoplasmic reticulum stress.2011

    • 著者名/発表者名
      Michinaga S, Hisatsune A, Isohama Y, Katsuki H.
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 190 ページ: 289-300

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Therapeutic effect of nicotine in a mouse model of intracerebral hemorrhage.2011

    • 著者名/発表者名
      Hijioka M, Matsushita H, Hisatsune A, Isohama Y, Katsuki H.
    • 雑誌名

      J Pharmacol Exp Ther.

      巻: 338(3) ページ: 741-749

    • 査読あり
  • [学会発表] Involvement of bacterial sialidase in the development of bacterial meningitis2011

    • 著者名/発表者名
      Akinori Hisatsune, Takashi Kasada, Shuhei Takahashi, Yoichiro Isohama, Hiroshi Katsuki
    • 学会等名
      Society for Neuroscience
    • 発表場所
      米国ワシントンDC・コンベンションセンター
    • 年月日
      2011年11月13日
  • [学会発表] 細菌性シアリダーゼはミクログリアを活性化する2011

    • 著者名/発表者名
      久恒昭哲,笠田高志,高橋周平,礒濱洋一郎,香月博志
    • 学会等名
      次世代を担う創薬・医療薬理シンポジウム2011
    • 発表場所
      北里大学薬学部(東京都)
    • 年月日
      2011年 8月31日

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公開日: 2013-07-10  

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