研究課題
中枢神経系疾患では、髄液中や血清中シアル酸値が上昇する。そこで、本研究ではこれまで不明であったシアル酸の病態生理学的な意義の解明を最終の目的と以下の検討を行った。1)ミクログリアに対するシアル酸の影響:ミクログリアは、炎症性因子の産生や死細胞の貪食などにより、脳内の環境を整える役割を担っている。そこでミクログリアの機能に対するシアル酸の作用について検討した結果、シアル酸はミクログリアにおける各種炎症性因子の発現には影響なかった。また、細胞膜上シアル酸の切断遊離による影響について検討した結果、シアル酸切断酵素シアリダーゼによってclassical activation時に機能する炎症性因子の発現が亢進した。一方で、alternative activation型のマーカー遺伝子の発現は全く亢進しなかった。従って、脱シアル酸によってclassical activation型のミクログリアへと活性化されていることが示唆された。2)神経細胞に対するシアル酸の影響:神経細胞の細胞膜表面には、数多くのシアル酸複合糖蛋白質、糖脂質が存在している。しかし、それらの詳細な機能や調節機序は未だ不明である。そこで、神経細胞に対するシアル酸の影響について検討したところ、神経突起の伸長反応に対して、シアル酸単独では効果を示さなかった一方で、シアル酸代謝酵素シアリダーゼの活性が寄与することが分かった。3)動物個体に対するシアル酸の影響:パーキンソン病などの中枢疾患では、ミクログリアの活性化を伴う炎症性反応が観察される。そこで、脳内における脱シアル酸化が各種細胞に対してどのように影響するか検討した。シアリダーゼの脳内微量投与の結果、活性化ミクログリアが観察され、神経細胞数は有意に減少した。これらから、ミクログリアにおける脱シアル酸化は、ミクログリアを活性化を経て、神経細胞が障害する可能性が示唆された。
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