研究課題/領域番号 |
23590110
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
前田 智司 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (60303294)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | プレセニリン複合体 / ニカストリン / アルツハイマー病 / シノビオリン / ユビキチン化 / 小胞体 |
研究概要 |
我々は、amyloid beta産生制御をプレセニリン複合体の構成因子の成熟・分解機構に焦点をあて、新規アルツハイマー病の治療薬の開発を目指した研究を行っている。これまでに、小胞体局在ユビキチンリガーゼであるシノビオリンがプレセニリン複合体の基本構成因子の1つであるニカストリンの分解およびamyloid beta産生促進に関与していることを明らかにした。今年度は、ニカストリンの小胞体―ゴルジ体の移動制御に関わるRer1の分解にシノビオリンが関与しているか、シノビオリン欠損細胞を用いて検討を行った。その結果、Rer1の分解にもシノビオリンが関与していること、さらに、amyloid beta の産生制御にもシノビオリン-Rer1分解系制御が関与していることを明らかにした。この結果をまとめて論文を投稿中である。また、ニカストリンの成熟機構についても検討を行った。リボソームで翻訳されたニカストリンは小胞体に送られ、糖鎖修飾後、小胞体シャペンロンであるカルネキシンにより折りたたみ異常の有無を検査され、正常なニカストリンはゴルジ体に送られ、折りたたみ異常なニカストリンはユビキチンープロテアソーム系により分解される。そこで、シノビオリン欠損細胞においてニカストリンの正常な糖鎖修飾が行われているか、カルネキシンとの相互作用の検討を行った。その結果、シノビオリン欠損細胞においてもニカストリンとカルネキシンの相互作用は観察された。さらに、糖鎖プロセッシング阻害剤であるツニカマイシンを用いて糖鎖修飾パターンをシノビオリン欠損細胞と野生型で比較した結果、糖鎖修飾パターンに差異がみられたので、今後詳細な検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、amyloid beta産生制御をプレセニリン複合体の構成因子の成熟・分解機構に焦点をあて、新規アルツハイマー病の治療薬の開発を目指した研究を行っている。これまでに、小胞体局在ユビキチンリガーゼであるシノビオリンがプレセニリン複合体の基本構成因子の1つであるニカストリンの分解およびamyloid beta産生促進に関与していることを明らかにした。23年度は、ニカストリンの小胞体―ゴルジ体の移動制御に関わるタンパク質Rer1の分解にシノビオリンが関与し、amyloid beta の産生制御にもシノビオリン-Rer1分解系制御が関与していることを明らかにした。この結果をまとめて現在論文を投稿中である。さらに、糖鎖プロセッシング阻害剤であるツニカマイシンを用いてニカストリンの糖鎖修飾パターンをシノビオリン欠損細胞と野生型で比較した結果、糖鎖修飾パターンに差異が観察された。これらの結果は、アルツハイマー病の治療薬の開発に繋がる可能性がある。23年度で行ったシノビオリン欠損細胞におけるニカストリンの糖鎖修飾パターンの解析については24年度も引き続き行い、ニカストリンの糖鎖修飾の異常がamyloid beta産生に与える影響等についてさらに解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
23年度では、糖鎖プロセッシング阻害剤であるツニカマイシンを用いてニカストリンの糖鎖修飾パターンをシノビオリン欠損細胞と野生型で比較した。その結果、糖鎖修飾パターンに差異がみられたので、24年度も引き続き行い、ニカストリンの糖鎖修飾の異常がamyloid beta産生に与える影響等についてさらに解析を進める。具体的な糖鎖修飾の解析方法は、シノビオリン欠損細胞からニカストリンを免疫沈降し、ビオチン標識したレクチンを用いて糖鎖修飾パターンを野生株と比較する。ニカストリンの糖鎖修飾の異常がamyloid beta産生に与える影響についての検討は、ツニカマイシンなどの糖鎖プロセッシング阻害剤を用いた場合のamyloid beta産生量を調べる。さらに、24年度はニカストリンの品質管理機構の解明を行う。 N型糖鎖の付加を受けるニカストリンは、小胞体で品質管理を受けてファールディング不全や過剰なニカストリンは分解を受けることが予想される。しかしながら、シノビオリン欠損細胞においては、糖鎖修飾が不完全な未成熟ニカストリンおよび未成熟ニカストリンよりも分子量がわずかに小さいニカストリン(ニカストリンS)の蓄積がウエスタンブロットにより検出される。これら蓄積した未成熟ニカストリンおよびニカストリンSの蓄積は品質管理が正常に機能していないと考えられるので、未成熟ニカストリンおよびニカストリンSの糖鎖修飾の解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、今後の推進方策に記述したように、ニカストリンの品質管理機構の解明を中心に研究を進めて行く予定であり、最終的には、未成熟ニカストリンおよび未成熟ニカストリンよりも分子量がわずかに小さいニカストリンの糖鎖配列の同定ができるよう研究を遂行する。糖鎖配列の同定には、24年度の請求額の3分の2程度の研究費がかかるのではないかと考えている。23年度の残金4千円も培地等の細胞培養関連の試薬の購入にあてる予定である。
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