研究課題/領域番号 |
23590110
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
前田 智司 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (60303294)
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キーワード | アルツハイマー病 / amyloid beta / ニカストリン / シノビオリン / Rer1 / 小胞体関連分解 |
研究概要 |
我々は、amyloid beta産生制御をプレセニリン複合体の構成因子の成熟・分解機構に焦点をあて、新規アルツハイマー病の治療薬の開発を目指した研究を行っている。これまでに、小胞体局在ユビキチンリガーゼであるシノビオリンがプレセニリン複合体の基本構成因子の1つであるニカストリンの分解およびamyloid beta産生促進に関与していることを明らかにした。今年度は、ニカストリンの小胞体―ゴルジ体の移動制御に関わるRer1の分解にシノビオリンが関与していることおよび、amyloid beta の産生制御にもシノビオリン-Rer1分解系制御が関与していることを明らかにし、論文にまとめた。 さらに、amyloid beta産生およびニカストリンの分解に関与し、小胞体関連分解を促進する事で小胞体を保護する蛋白質であると考えられているHomocysteine-induced ER protein(Herp)の分解機構の解析を行った。Herpがシノビオリンと相互作用することが報告されているので、シノビオリンがHerpの分解に関与しているかシノビオリン欠損細胞を用いて解析を行った。その結果、シノビオリンがHerp分解に関与し、その分解機構はユビキチン依存的プロテアソーム分解機構であることが示された。さらに、NADH quinone oxidoreductase 1(NQO1)が関与しているユビキチン非依存的プロテアソーム分解系においてもHerpが分解制御を受けていることを明らかにし、論文を投稿中である。今後は、NQO1が関与しているユビキチン非依存的プロテアソーム分解系とSynoviolinとの関係について解析を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、amyloid beta産生制御をプレセニリン複合体の構成因子の成熟・分解機構に焦点をあて、新規アルツハイマー病の治療薬の開発を目指した研究を行っている。これまでに、小胞体局在ユビキチンリガーゼであるシノビオリンがプレセニリン複合体の基本構成因子の1つであるニカストリンの分解およびamyloid beta産生促進に関与していることを明らかにした。24年度は、ニカストリンの小胞体―ゴルジ体の移動制御に関わるタンパク質Rer1の分解にシノビオリンが関与し、amyloid beta の産生制御にもシノビオリン-Rer1分解系制御が関与していることを明らかにした。この結果をまとめた論文が学術論文に採択された。さらに、amyloid beta産生に関与し、小胞体関連分解を促進する事で小胞体を保護する機能を有する蛋白質であると考えられているHomocysteine-induced ER protein(Herp)の分解機構の解析を行い、論文を投稿中である。また、23年度よりニカストリンの糖鎖修飾に関して研究を継続しており、糖鎖プロセッシング阻害剤であるツニカマイシンを用いてニカストリンの糖鎖修飾パターンをシノビオリン欠損細胞と野生型で比較した結果、糖鎖修飾パターンに差異が観察された。25年度は小胞体関連分解およびニカストリンの分解にも関与しているHerpとシノビオリンの関連にも着目し、シノビオリン欠損細胞におけるニカストリンの糖鎖修飾パターンの解析を行い、ニカストリンの糖鎖修飾異常がamyloid beta産生にどのような影響を与えるか検討を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
23、24年度では、糖鎖プロセッシング阻害剤であるツニカマイシンを用いてニカストリンの糖鎖修飾パターンをシノビオリン欠損細胞と野生型で比較した。その結果、糖鎖修飾パターンに差異がみられたので、ニカストリンの糖鎖修飾の異常がamyloid beta産生に与える影響等についてさらに解析を進める。具体的には、ツニカマイシンなどの糖鎖プロセッシング阻害剤を用いた場合のamyloid beta産生に影響を与えるか調べる。さらに24年度においては、小胞体関連分解を制御するレクチンOS-9とXTP3-Bおよび小胞体でのタンパク質のフォールディングに関わるカルネキシンとニカストリンの相互作用の解析を行っており、これらの解析結果をもとに小胞体でのニカストリンの分解調節機構を明らかにしていく。シノビオリン欠損細胞においては、糖鎖修飾が不完全な未成熟ニカストリンおよび未成熟ニカストリンよりも分子量がわずかに小さいニカストリン(ニカストリンS)の蓄積がウエスタンブロットにより検出される。これら蓄積した未成熟ニカストリンおよびニカストリンSの蓄積は品質管理が正常に機能していないと考えられるので、未成熟ニカストリンおよびニカストリンSの糖鎖修飾の解析を行う。具体的な糖鎖修飾の解析方法は、シノビオリン欠損細胞からニカストリンを免疫沈降し、ビオチン標識したレクチンを用いて糖鎖修飾パターンを野生株と比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、今後の推進方策に記述したように、ニカストリンの品質管理機構の解明を中心に研究を進めて行く予定であり、最終的な目的としては未成熟ニカストリンおよび未成熟ニカストリンよりも分子量がわずかに小さいニカストリンの糖鎖配列の同定を目標している。糖鎖配列の同定には、25年度の請求額の3分の2程度の研究費がかかるのではないかと考えている。また、ニカストリンの糖鎖プロセッシング異常がamyloid beta産生にどのような影響を与えるか検討を行っていく。
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