色素上皮由来因子 (Pigment Epithelium-derived Factor;PEDF)は、セリンプロテアーゼインヒビターファミリーに属する約50kDの分泌性糖蛋白質であり、脳を含む多くの組織で発現していることが明らかとされている。神経栄養因子様作用(Fig. 1)や血管新生抑制作用などを有することがこれまでに報告されており、脳虚血、筋萎縮症側索硬化症(ALS)、パーキンソン病などの神経変性疾患や、加齢性黄斑変性、糖尿病性失明などの血管新生を伴う眼科系疾患に対する臨床応用が期待されている。今年度は、グリア系細胞に対するPEDFの作用を解析する目的で、培養オリゴデンドロサイトやアストロサイトを用いて検討を行った。PEDFを作用させたオリゴデンドロサイトではグルタミン酸毒性による細胞死を抑制すること、アストロサイトのグルタミン酸取り込みを促進することなどを明らかとしたた。また作成したPEDFを用いて脳虚血負荷後の動物の脳神経系再生過程におけるPEDFの効果を検討したが、結果にバラつきがありPEDFの効果を証明するには至らなかった。こんごさらに例数を増やすなどして効果の検証に努めたい。
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