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2011 年度 実施状況報告書

網膜における神経―グリア―血管連関成立機序の解析と新規緑内障治療薬開発への応用

研究課題

研究課題/領域番号 23590112
研究機関北里大学

研究代表者

中原 努  北里大学, 薬学部, 准教授 (10296519)

研究分担者 森 麻美  北里大学, 薬学部, 助教 (80453504)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード薬理学 / 血管生物学 / 網膜血管 / 神経節細胞 / グリア細胞
研究概要

緑内障と糖尿病網膜症は、後天性失明や視力低下の原因として大きな割合を占める、社会的な問題となっている疾患である。両疾患の発症と進行には網膜循環障害が深く関与しているため、網膜循環を正常化することは視覚障害の進行を阻止するための有効な手段となり得る可能性がある。本研究では、緑内障モデルラットを用いて、1) 網膜血管の構造・機能維持における網膜神経細胞とグリア細胞の役割、と 2) 網膜における神経細胞―グリア細胞―血管構成細胞間の相互作用の分子基盤に焦点を絞り解析し、網膜循環の正常化に基づく緑内障(網膜神経障害)の新規予防・進行抑制戦略を提案することを目的とする。 本年度は、1. マクロファージ遊走阻止因子 (macrophage migration inhibitory factor; MIF) の NMDA 硝子体内投与誘発網膜神経傷害および血管傷害における意義について検討を進めた。MIF は、正常ラット網膜において、グリア細胞(アストロサイト、ミュラー細胞)に発現しており、MIF 阻害薬 ISO-1 の処置により網膜神経傷害が抑制されたことから、「神経ーグリア連関」を担う因子の一つである可能性が示唆された。2. 申請者らがこれまでに網膜循環改善作用を有することを見い出しているβ3-アドレナリン受容体刺激薬 CL316243 の網膜神経保護作用について検討した。そして、CL316243 に NMDA 誘発網膜神経傷害を抑制する作用があることを見い出した。このことは、β3-アドレナリン受容体の刺激を介する網膜血流量の増加が網膜神経の生存を促している可能性を示唆するものと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マクロファージの遊走に影響を及ぼす因子である MIF が網膜のグリア細胞に発現していること、またその作用を抑制することで網膜神経傷害が抑制されたことから、網膜神経傷害へのグリア細胞の関与を示唆することができた。網膜神経傷害における MIF の意義についてはこれまでに十分な検討がなされておらず、「神経―グリア連関」に関わる新しい因子として興味深い。また、網膜循環改善作用を有する薬物が網膜神経傷害を抑制することを見い出し、「血管―神経連関」についても検討を進めることができた。このように本研究課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

「神経―グリア連関」と「血管―神経連関」の解析はおおむね順調に進んでいるので、今後も、それらの解析を継続するとともに、両者を結び付けた「神経―グリア―血管連関」全体の理解が深められるような検討も進める必要がある。例えば、網膜神経傷害モデルで観察されるグリア細胞の変化が、網膜循環改善薬を適用することでどのように変化するか、ミクログリアの除去/機能抑制が網膜循環改善薬の神経保護作用にどのような影響を及ぼすか等の検討。また、網膜の器官培養系およびグリア細胞と神経節細胞または網膜血管内皮細胞との共培養系を用いた in vitro 実験を in vivo 実験と並行して進めていくことも必要である。

次年度の研究費の使用計画

1.「マクロファージ遊走阻止因子 (MIF) の NMDA 硝子体内投与誘発網膜神経傷害および血管傷害における役割」(1) MIF の発現変動:NMDA 硝子体内投与により網膜神経傷害を誘発した後の MIF の網膜内分布と発現量の変化について検討する。正常ラット網膜において、MIF はグリア細胞(アストロサイト、ミュラー細胞)に発現していることが明らかになったので、それらの細胞における発現変化に注目しながら検討を進める。(2) MIF 阻害の効果:MIF 阻害薬 ISO-1 または MIF 中和抗体の網膜神経傷害、網膜血管傷害およびミクログリアの活性化・集積に及ぼす影響を調べることで、MIF の「神経―グリア―血管連関」における役割を明確にする。2.「網膜血管拡張薬の網膜神経保護作用とミクログリア機能変化との関連性」(1) NMDA 誘発網膜神経傷害に対する CL316243 の抑制効果におけるミクログリアの役割をミクログリアの形態変化を検討するとともにリポソーム封入クロドロネートによるミクログリアの除去/機能抑制の影響を検討することにより明らかにする。(2) 網膜の器官培養系およびミクログリアと神経節細胞または網膜血管内皮細胞との共培養系を用いた in vitro 実験も進めていく。3. 申請者らがこれまでに見い出してきた網膜循環改善薬ならびに神経保護薬の有効性にミクログリアの機能変化が関与しているか否かについて検討する。 以上の研究の遂行上、必要な実験動物、試薬(抗体を含む)等の物品費と成果発表のための旅費に研究費を使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Noradrenaline contracts rat retinal arterioles via stimulation of α1A- and α1D-adrenoceptors2011

    • 著者名/発表者名
      Mori A, Hanada M, Sakamoto K, Nakahara T, Ishii K
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 673(1-3) ページ: 65-69

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Role of β3-adrenoceptors in regulation of retinal vascular tone in rats2011

    • 著者名/発表者名
      Mori A, Nakahara T, Sakamoto K, Ishii K
    • 雑誌名

      Naunyn-Schmiedeberg's Arch Pharmacol

      巻: 384(6) ページ: 603-608

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Vasodilation of retinal arterioles induced by activation of BKCa channels is attenuated in diabetic rats2011

    • 著者名/発表者名
      Mori A, Suzuki S, Sakamoto K, Nakahara T, Ishii K
    • 雑誌名

      Eur J Pharmacol

      巻: 669(1-3) ページ: 94-99

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Small molecule cyclin-dependent kinase inhibitors protect against neuronal cell death in the ischemic-reperfused rat retina2011

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto K, Ohki K, Saito M, Nakahara T, Ishii K
    • 雑誌名

      J Ocul Pharmacol Ther

      巻: 27(5) ページ: 419-425

    • 査読あり
  • [学会発表] ノルアドレナリンはα1A- および α1D-アドレナリン受容体を介してラット網膜細動脈を収縮させる2012

    • 著者名/発表者名
      森麻美、花田真幸、坂本謙司、中原努、石井邦雄
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      北海道大学(札幌)
    • 年月日
      2012.3.29
  • [学会発表] カプサイシンはオピオイド受容体の刺激を介してラット網膜におけるNMDA誘発神経細胞死を抑制する2012

    • 著者名/発表者名
      坂本謙司、黒木大陽、関谷春菜、渡辺彰宏、森麻美、中原努、石井邦雄
    • 学会等名
      第85回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都)
    • 年月日
      2012.3.16
  • [学会発表] β3アドレナリン受容体刺激薬CL316243の網膜神経保護効果2012

    • 著者名/発表者名
      中原努、赤沼かおり、及川風花、森麻美、坂本謙司、石井邦雄
    • 学会等名
      第85回日本薬理学会年会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都)
    • 年月日
      2012.3.15

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公開日: 2013-07-10  

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