研究課題/領域番号 |
23590113
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 岳之 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (90187740)
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研究分担者 |
郭 伸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (40160981)
佐藤 薫 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 第一室長 (10311391)
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キーワード | 神経炎症 / グルタミン酸 / ATP / ミクログリア / パロキセチン |
研究概要 |
本研究において我々は、特に脊髄における神経伝達の異常に伴う疾患(神経因性疼痛など)や神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症など)において、これまで明らかとはなっていなかった、疾患増悪をもたらす因子の解明を行った。 脊髄に限らず、中枢神経系の機能異常や神経変性が生じる際に、神経において炎症性の変化が見られることが明らかとなってきており、我々は特に神経炎症に注目した。 神経炎症を惹起する細胞として、ミクログリアに焦点を当てた。In vitro条件下でミクログリアを活性化処理し、そこから放出されてくる内因性因子を解析した。その結果、活性化ミクログリアよりグルタミン酸が放出され、神経毒性を示すことを明らかにした。このグルタミン酸の放出作用はグルタミン酸受容体を介する作用ではなく、グルタミン酸トランスポーターを介する作用であることを明らかにした。 また、本年度、特に疾病治療にリンクする知見として、抗うつ薬の一つであるパロキセチンがミクログリアの活性化を抑制する知見を得た。これは、神経疾患に対する新たな治療アプローチを示すもので、現在も継続的に研究を行っている。 さらに、ミクログリアの活性化を増悪する因子として、ATPがあることを明らかにした。ミクログリアが活性化することによりATPを放出することを見いだし、さらにそのATPがP2X4受容体を介してミクログリアの活性化の促進をもたらしている可能性を明らかにした。パロキセチンがこのメカニズムに関与することを明らかとしたが、その機序に関しては検討中である。 本研究により、脊髄における神経疾患において、ミクログリアを介したATP-グルタミン酸系の機能異常が疾患増悪に結びつくこと、パロキセチンがそれに対し治療効果を持つ可能性があることを見いだした。
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