研究課題/領域番号 |
23590114
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高木 教夫 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (50318193)
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キーワード | 脳虚血 / 脳血管 / チロシンリン酸化 / 脳梗塞 / 血液脳関門 |
研究概要 |
申請者はこれまでSrc familyチロシンキナーゼの阻害薬がラット一過性中大脳動脈閉塞後の梗塞巣体積縮小効果を発揮することと、この効果の一部に血液脳関門構成タンパク質occludin及び活性酸素発生にかかわるNADPH oxidaseが関与することを明らかにしてきた。また、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)タンパク質の免疫組織学的手法により好中球の脳組織浸潤を評価した結果、一過性中大脳動脈閉塞後再灌流後24時間目において、脳血管及び脳血管外にMPO陽性細胞が観察された。これらのMPO陽性細胞はGFAP陽性細胞(アストロサイト)あるいはNeuN陽性細胞(神経細胞)とmergeしないことから、一過性脳虚血後の脳組織内への好中球浸潤を示唆した。さらに、チロシンキナーゼ阻害薬の効果を検討したところ、MPO陽性細胞数は顕著に減少した。これらの結果は、一過性脳梗塞後の脳血管におけるチロシンリン酸化反応が血液脳関門の破綻と好中球浸潤に深く関わることを示唆している。 本年度はさらに、脳梗塞急性期の炎症反応が寄与する病態生理学的変化を把握するとともに、炎症反応誘発性酸化ストレスに及ぼすSrcの役割について検討した。その結果、炎症反応で発現が誘導されるcyclooxygenase-2(COX-2)量は、再灌流後24時間目で顕著に増加し、炎症性サイトカインであるIL-1β量は再灌流後1時間目で増加していた。IL-1βがp67phoxやCOX-2より早期に増加していることから、IL-1βがその後の酸化ストレスやさらなる炎症反応を惹起する可能性を示した。また、Src familyチロシンキナーゼ阻害薬の投与により、再灌流後24時間目のCOX-2量の増加は抑制された。したがって、再灌流後のNOX増加による活性酸素種産生の上流にSrc活性化が関与している可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画は、虚血という事象に最初に遭遇する脳血管に着目し、in vivo脳梗塞での病態生理学的変化を明らかにした上で、脳血管とその周囲環境を第一義的創薬ターゲットに据えている。この計画の中で、in vivo動物モデルの作製はこれまで申請者が遂行してきた方法を踏襲した。平成24年度は、脳血管画分においてチロシンキナーゼ阻害薬によるp67phox増加の抑制効果を確認し、さらにCOX-2量増加の抑制効果を見いだした。チロシンキナーゼ阻害薬は、FITC-アルブミンの血管外漏出や好中球の脳実質への浸潤を抑制することから、これら脳血管病変に寄与するNOX由来の活性酸素種産生とCOX-2発現上昇の上流にSrcが存在することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の計画に基づき研究を推進する予定である。実験進行中である平成24年度計画部分を継続し、平成25年度は引き続き血液脳関門構成タンパク質、特に細胞接着因子及び血管新生因子とその受容体に着目し、チロシンリン酸化の標的と、そのチロシンリン酸化機序の解明を試みる。さらに、脳血管の周囲環境、特にペリサイトおよびアストロサイトの形態に及ぼすチロシンリン酸化阻害薬の効果を組織学的に検討し、かつペリサイトに発現するPDGFR-βの局在変化とその病態生理学的意義を明らかにしていく予定である。血液脳関門の破綻機序解明と治療戦略の構築を検討するため、グリア-内皮細胞共培養系の予備実験を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画書に対応し研究費を使用する。平成25年度は主に実験動物(ラット)代及び試薬・抗体代の消耗品費に使用する予定である。また、グリア-内皮細胞共培養系の実験開始とその実験系構築のために実験動物代及び培養用試薬等の消耗品費として一部使用する予定である。なお、研究成果が纏まり成果発表が可能な場合、論文を作成し英文校閲代として使用するほか、学会発表のための参加費及び国内旅費に充てる予定である。
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