アルファBクリスタリン(CryAB)の心筋梗塞後心不全への病態生理学的役割を検討した。ラットで心筋梗塞を作製すると、心筋梗塞後2週目で観察された心筋CryABの増大傾向が不全心では消失した。このCryAB の減少には、転写因子HSF-1の機能低下が関与した。このHSF-1の機能低下はCryABだけでなく、ストレス負荷に対するHSP72誘導能も低下させた。さらに不全心ではミトコンドリア画分のリン酸化CryABが減少し、ゲラニルゲラニルアセトン投与により改善された。これらの知見から転写因子HSF-1の機能低下とミトコンドリアでのリン酸化CryAB減少が、心不全を発症させる要因の一つと考えられた。
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