研究概要 |
Gq蛋白質共役型ヒスタミンH1受容体(H1R)は、中枢から末梢に至るまで広範囲に分布し、覚醒レベル調節や即時型アレルギーなどの各種生理・病態に深く関与している。しかしながら、受容体刺激に伴うH1Rの細胞内Trafficking機構に関する研究は、ほとんど進んでいない。一般に、G蛋白質共役型受容体(GPCR)の細胞内Traffickingにおいて、アレスチンは、GPCRの細胞内C末端に結合することによって、クラスリン被覆小胞の形成に関与するとされる。ここで、H1Rの細胞内C末端は、他のGPCRに比べて極端に短く(17アミノ酸残基)、また、可視化を目的にH1Rの細胞内C末端をGFPで標識したH1Rは、野生型H1Rと異なり、脂質ラフト/カベオラを介した機構によって細胞内に輸送される(Self et al., Br. J. Pharmacol., 146, 612, 2005; Hishinuma et al., J. Neurochem., 113, 990, 2010)。従って、H1受容体のC末端に対するアレスチンの結合親和性が、H1Rの細胞内輸送におけるクラスリン/カベオラ選別輸送に関与する可能性が高いと考えられるが、受容体可視化の目的で細胞内C末端を修飾することは、H1Rの真の細胞内Trafficking機構の解明には不適当と考えられる。そこで、当該年度は、まず、H1Rの細胞外N末端にHAタグをつけた変異H1R(HA-H1R)を作成し、その細胞内Trafficking機構を解析した。その結果、HA-H1Rは、野生型H1Rと同様に、脂質ラフト/カベオラ経路ではなく、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に輸送されることが明らかとなった。現在、H1Rの細胞内輸送におけるクラスリン/カベオラ選別機構の詳細を解明する目的で、HA-H1Rの細胞内C末端側の変異受容体を作製中である。
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