研究概要 |
アゴニスト刺激に伴うG蛋白質共役型受容体(GPCR)の細胞内輸送には、G蛋白質共役型受容体キナーゼ/アレスチン/クラスリンを介した小胞輸送経路が関与することが知られている。一般に、GPCRの細胞内輸送において、アレスチンは、GPCRの細胞内第3ループ/C末端に結合することによって、クラスリン被覆小胞の形成に関与するとされる。ここで、ヒスタミンH1受容体(H1R)の細胞内C末端は、他のGPCRに比べて極端に短く、また、可視化を目的にH1Rの細胞内C末端をGFPで標識したH1Rは、野生型H1Rと異なり、脂質ラフト/カベオラを介した機構によって細胞内に輸送されることが知られている(Self et al., Br. J. Pharmacol., 146, 612, 2005; Hishinuma et al., J. Neurochem., 113, 990, 2010)。当該研究では、昨年度までに、H1Rの細胞外N末端をHAタグで標識した変異H1R(HA-H1R)を作成し、その細胞内輸送機構を解析した。その結果、HA-H1Rは、野生型H1Rと同様に、クラスリン被覆小胞を介して細胞内に輸送されることが明らかとなった。そこで、今年度は、H1Rの細胞内輸送におけるC末端の役割を明らかにする目的で、HA-H1Rの細胞内C末端変異受容体3種(HA-T478A、HA-S487A、HA-S487trancation)を作製して解析した。その結果、HA-T478A及びHA-S487Aは、野生型H1Rと同様に、アゴニスト刺激に伴いクラスリン被覆小胞を介して細胞内に輸送されること、一方、C末端1残基を切断したH1R(HA-S487trancation)では、細胞内輸送が阻害されることを見出した。従って、H1Rの細胞内C末端は、細胞内輸送に極めて重要な役割を果たしていると考えられる。
|