研究課題/領域番号 |
23590120
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
枝川 義邦 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (50303607)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞死 / 薬理学 / アポトーシス / マイクロ流体システム / ミクロ薬理学 |
研究概要 |
本研究では、単一細胞における細胞生物学的検討を行うためのマイクロデバイスの最適化を行い細胞死の詳細なメカニズムの解明を試みることから、まずは通常の培養皿において培養細胞にストレスを与えることによる細胞死誘発の条件を検討した。そして、培養したPC12細胞にNGF暴露を施すことにより突起伸長を誘発した系においてStaurosporine(2 uM)の投与が有意にアポトーシスを誘導することを確認した。 本研究で用いるマイクロ流体デバイスは、ガラス底のディッシュにpolydimethylsiloxane(PDMS)により作製したレプリカをマウントさせた構造をもち、内部のデザインとして直線状のメインチャネル(幅100 um)と細胞のハンドリングを行う半円筒状のマイクロチャンバー(断面の直径100 um)を配したものとした。これを倒立顕微鏡のステージ上に簡易型インキュベーターを設置し、その中で顕微鏡観察下での培養細胞の挙動をCCDカメラを用いて経時的に観察した。 このようなマイクロ流体システムを用いることにより、細胞懸濁液から複数の単一細胞の非侵襲的な捕獲・培養を効率よく実行することが可能であった。単一細胞ハンドリングとしてPC12細胞を用いて行い、デバイス内での微小培養中に神経成長因子の暴露により突起伸長制御を行った。また、オルガネライメージングとして、生細胞の核染色にHoechist33342、ミトコンドリア染色にMitotracker、アクチン染色にはPhalloidinを用いた可視化を実行した。さらに、Staurosporine(2 uM)を暴露させることにより、アポトーシスのエフェクターカスパーゼとされるCaspase-3, 7の細胞内発現を認めた。 この結果は、当該システムが単一細胞の解析に適していることを示し、細胞死関連の情報獲得を可能とすることを期待させるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における当該年度の計画では、通常の培養皿における培養細胞に対して、従来の細胞死研究で用いられるアポトーシス誘発試薬を適用することで細胞死誘発の条件を把握すること、CaspaseやDNA関連の生細胞ライブイメージングを施すこと、これらの結果を踏まえて、マイクロ流体デバイスにおける微小培養を実現し、その細胞についてアポトーシス誘発条件での薬理学的検討を行う予定であったことから、現時点でこれらがおおむね順調に行われており、次年度の研究計画に速やかに進められると評価しているものである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降では、マイクロデバイス内で微小培養した単一細胞について、パターン化させて突起伸長を誘発させ、さらにその細胞にアポトーシスを誘発させることで、単一細胞レベル、細胞下レベルでの詳細な解析を行う予定である。 そのために、マイクロデバイス内での細胞捕獲・培養・突起伸長を効率よく実施できるように、さらにデバイスの最適化を試みながら、細胞生物学・薬理学的検討を進める。そのためには、微小空間での層流現象を利用した局所的な薬理学的な刺激とライブイメージングを組み合わせた方法により、経時的に細胞の挙動を観察することを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロ流体デバイスの最適化に向け、デバイス作製にはクロムマスクが必要である。これは申請時に既に計画書に記載しているものであるので、計画通り実施する予定である。 また、細胞培養関連の消耗品(試薬類およびプラスティック機器等)や薬理学的検討に必要な消耗品(試薬類等)は必須のものである。 さらに、学会参加や投稿論文による成果報告も行う予定であり、これらを総じて2年目の研究費使用とすることを計画している。
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