H. 23-24年度において、硫化水素(H2S)産生に関わる酵素cystathionine-gamma-lyase(CSE)による内因性H2Sが胃がん由来細胞株の細胞増殖を促進的に調節しており、この調節にはH2SによるCav3.2 T型Ca2+チャネルの機能増強およびNF-kBを介したアポトーシス抑制作用が一部寄与していることが示唆された。さらに、H. 24年度は、マクロファージにおける内因性H2Sの機能についても検討を行い、グラム陰性菌毒素のリポ多糖(LPS)がマクロファージ様分化THP-1細胞においてCSEの発現を増加させる傾向を示すこと、また、炎症性サイトカインとして働くことが最近明らかになった核内タンパク質HMGB1(high mobility group box 1)のTNF-α刺激による遊離反応が因性H2Sにより抑制的に調節されていることを示す結果が得られた。H. 25年度は、内因性H2Sによる抗アポトーシス作用を、抗アポトーシスタンパクのBcl-xLおよびBcl-2発現量を測定することで検討し、内因性H2S産生がこれらタンパク発現を増加させることでアポトーシスを抑制しており、これがH2Sの細胞増殖作用に寄与している可能性が示唆された。以上の結果より、CSEにより内因性に産生されるH2Sは、胃がん由来細胞では細胞増殖促進的に働いており、この効果にはH2Sの下流シグナルとしてCav3.2 T-channelおよび抗アポトーシス的に働くNF-κB系の活性化が関与している可能性が示唆された。
|