研究課題/領域番号 |
23590123
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
江本 憲昭 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (30294218)
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キーワード | エンドセリン / エンドセリン変換酵素 / ブラジキニンニン / ナトリウム利尿ペプチド / 肺高血圧症 / 遺伝子欠損マウス |
研究概要 |
本研究では、心血管系疾患の病態進展に重要な役割を果たすエンドセリン(ET)系、ブラジキニン(BK)系、利尿ペプチド(NP)系、レニン・アンジオテンシン(RAS)系といった循環調節ペプチド系を互いに連関するネットワークとして包括的に制御する新たな治療戦略を確立することを目的とするものである。具体的には、これらのペプチドネットワークに対して広範な基質特異性を保持しているエンドセリン変換酵素(ECE)を阻害するというアプローチが、どのような影響を及ぼし病態を改善するかを、肺高血圧症をモデルとして検証し、最終的には本研究の成果により、臨床現場にECE阻害という新たな治療戦略の可能性を提案する。 当該年度は、前年度で見いだしたECE遺伝子欠損マウスが低酸素誘発生肺高血圧に抵抗性を示す分子機序の解明を試み、最終的にECE遺伝子欠損マウスでは、ブラジキニン系が活性化していることを明らかにした。 さらに、私たちはECE遺伝子欠損マウスを用いて、新たなモデルとしてブレオマイシン誘発生の肺線維症モデルを作製し、肺高血圧症および肺線維化について野生型マウスと比較検討した。その結果、本モデルでは肺動脈圧はECE遺伝子欠損マウスと野生型で有意な差を見いだせなかったが、肺線維化はECE遺伝子欠損マウスで有意に抑制されていた。その分子メカニズムとして、エンドセリン系とは独立した因子としてCGRP系が重要であることが明らかとなった。 以上よりECE阻害が肺高血圧症のひとつの原因となる肺線維症の発症を抑制することが期待され、新たなECE阻害薬が新たな治療手段となることが期待された。 これらの結果は論文として国際一流誌に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では昨年度に得た結果を踏まえ、ECE阻害によるブラジキニン系の活性化を明らかにすることができた。さらに異なるモデルでECE阻害によるCGRP系の活性化を示すことができた。この二つの研究成果により、「循環調節ペプチド系を互いに連関するネットワークとして包括的に制御する」ために、ECE阻害という治療戦略が有望であることを示すことができたため、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では第3のECEの標的と考えられるナトリウム利尿ペプチド系に焦点をあてて、研究を遂行する。具体的にはECE遺伝子欠損マウスで糖尿病モデルを作製し、心臓ならびに腎臓の表現型を解析することにより、ECE阻害によるナトリウム利尿ペプチド系の活性化の有用性を明らかにする。予備的実験結果で、ECE遺伝子欠損マウスでは野生型マウスと比較して、糖尿病に伴う心筋線維化、ならびに腎機能障害が有意に抑制されており、そのメカニズムをナトリウム利尿ペプチド系に着目して解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主として消耗品に使用される。具体的には、免疫組織化学用抗体、免疫酵素法解析キット、定量的PCR試薬、マウス遺伝子型検索試薬などである。 また、各種循環ペプチド系に生体で作用する特異的な受容体拮抗薬や阻害薬の購入も必要となる。 さらにマウスの維持・管理に関わる諸費用にも使用予定である。 前年度は実験遂行に必要な物品購入後に未使用額として8,403円が生じた。抗体や酵素は使用期限があることから、前年度に購入して保存するのは望ましくないため、次年度の実験使用直前に購入する費用に当てる予定である。
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