研究課題
1)Dysbindin-1とサイクリンD1の結合の生理学的意義の解明昨年度までに、dysbindin-1は細胞周期調節因子の一つであるサイクリンD1と結合することを見いだし、結合に必要な分子内領域の決定や哺乳動物細胞内での局在などを明らかにしてきた。今年度は、サイクリンD1の細胞内での発現に対するdysbindin-1の機能について解析を行った。NIH3T3細胞にサイクリンD1発現ベクターとdysbindin-1ノックダウンベクターを同時に遺伝子導入したところ、サイクリンD1の発現が増加しており、dysbindin-1はサイクリンD1の細胞内における安定性を制御していると考えられた。サイクリンD1は細胞周期進行に伴ってユビキチンープロテアソーム系により分解されることが知られている。現在、dysbindin-1がサイクリンD1のユビキチンープロテアソーム系による分解に関与しているか、プロテアソーム阻害剤を用いた解析やある種のユビキチンリガーゼの関与などを検証中である。2)生後マウスの神経発達におけるdysbindin-1の機能解析私共は、in vivoエレクトロポレーションにより生後マウス嗅球における神経新生を解析する過程で、ある条件下で海馬歯状回神経細胞の発達を解析できることを見いだした。これまでにdysbindin-1は初代培養海馬神経細胞の樹状突起スパインの成熟を制御することを明らかにしている。Dysbindin-1がin vivoにおける神経発達を制御しているか検討するため、in vivoエレクトロポレーションにより生後マウス歯状回神経細胞の発達を解析する手法を開発することを試みた。その結果、最適な電極の角度、電気パルス等の条件を見つけ、安定した結果が得られるようになった。
2: おおむね順調に進展している
Dysbindin-1の結合分子としてサイクリンD1を見いだし、結合部位、細胞内局在、タンパク質の安定化作用などがわかってきた。これらは、dysbindin-1の新規機能を示唆する知見であり、本研究の研究目的を達成できていると考えている。また、in vivoにおける歯状回神経細胞の発達を解析する手法も新たに見いだし、dysbindin-1の神経発達における機能を解析する体制も構築できた。このようなことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
Dysbindin-1とサイクリンD1の結合の生理的意義の解明については、dysbindin-1によるサイクリンD1の安定化の分子機構を明らかにしていきたい。また、マウス個体における海馬歯状回神経細胞の発達におけるdysbindin-1の機能についても、私共が開発したin vivoエレクトロポレーションにより明らかにしていきたい。
平成24年度から平成25年度にin vivoエレクトロポレーションにより生後マウス嗅球における神経新生を解析する手法を修得した。その過程で同じ手法により、ある条件下で海馬歯状回での神経新生を解析できることがわかったため、dysbindin-1の歯状回神経細胞の発達における機能解析を行うこととした。しかしながら、実験条件の検討に時間がかかったため、次年度使用額が生じた。マウス個体を用いた、歯状回神経細胞の発達におけるdysbindin-1の機能解析および研究成果発表を行う予定であるため、その経費として使用する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Histol Histopathol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
EMBO Mol Med.
巻: 6 ページ: 414-429
10.1002/emmm.201303069
J Neurosci Res.
巻: 91 ページ: 1303-1311
10.1002/jnr.23266
Biochim Biophys Acta.
巻: 1833 ページ: 2302-2310
10.1016/j.bbamcr.2013.06.005
http://www.inst-hsc.jp/