研究課題/領域番号 |
23590127
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
加藤 敦 富山大学, 大学病院, 准教授 (60303236)
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研究分担者 |
高畑 廣紀 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (00109109)
広野 修一 北里大学, 薬学部, 教授 (30146328)
石井 達 大分大学, 医学部, 客員研究員 (00222935)
足立 伊左雄 富山大学, 大学病院, 教授 (30151070)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リソソーム病 / グリコシダーゼ / イミノ糖 / シャペロン / フォールディング |
研究概要 |
平成23年度では、まずβ-glucocerebrosidase活性中心近傍の環境を理解することがより強力なアフィニティーを持つイミノ糖をデザインする上で重要であると考え、米国においてゴーシェ病治療薬候補としてフェーズIIまで進んだ実績をもつisofagomine類および構造的共通性を有する1-deoxynojirimycin類やfagomine類を選択し、β-glucocerebrosidaseとの結合様式について解析を行った。代表的なピペリジン型イミノ糖である1-deoxynojirimycinやfagomineは、1mM添加でもGCaseに対し親和性を示さなかった。一方、D-Isofagomineや calystegine B2など1-N型イミノ糖構造をもつ化合物には明らかな親和性が認められ、特にD-Isofagomineは、β-glucocerebrosidaseに対し非常に高い親和性を示した(IC50値0.063μM)。D-isofagomine のエピマーを用いてβ-glucocerebrosidase に対する構造活性相関を検討したところ、C3 位のエピ化により親和性は低下し、更にC3,4 位のジエピ化により阻害活性は、ほぼ完全に消失した。タンパク- リガンドinduced fit docking 解析から、D-3-epi-isofagomine では、D-isofagomine とβ-glucocerebrosidase との間で認められるC3 位OH基とAsp127 およびTrp179 の水素結合が形成できないことが明らかとなり、これが活性低下の要因であると推察された。これら得られた結果を基に現在、D-Isofagomineと同じ1-N型イミノ糖構造を有するcalystegine B2をベースにより選択的かつ安定性に優れた化合物のデザインを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の成果により、目標であったβ-glucocerebrosidase活性中心近傍の環境の解析を行うことができた。特にD-Isofagomineや calystegine B2など1-N型イミノ糖構造をもつ化合物には、明らかな親和性が認められたのに対し、これまで主に研究が進められてきたピペリジン型イミノ糖である1-deoxynojirimycinやfagomineでは、1mM添加でもβ-glucocerebrosidaseに対し親和性を示さず、ピペリジン環内の位置が非常に重要であることを明らかにできた。また、ヒトβ-glucocerebrosidaseの3次元座標データを用いて、イミノ糖類のコンピュータリガンドドッキングを行い、得られた複合体構造を初期構造として水溶液中の分子動力学シミュレーションを実行しリガンドの結合自由エネルギーをMM-PBSA法で計算した。その結果、isofagomine類においても水酸基の配位の違いにより、水溶液中での安定配座が全く異なることも初めて明らかにできた。また、これまでほとんど着目されていなかったazetidine型イミノ糖についてもバリエーション合成を行い活性を評価することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行ったタンパク- リガンドinduced fit docking 解析から、D-3-epi-isofagomine では、D-isofagomine とβ-glucocerebrosidaseとの間で認められるC3 位OH基とAsp127 およびTrp179 の水素結合が形成できないことが明らかとなり、これが活性低下の要因であると推察された。更に、IFDscore 上位10 構造を観察した結果、阻害活性が消失した3,4-di-epi-isofagomine では配座が全てばらついており、β-glucocerebrosidaseの活性中心において安定な配座を維持できていないことが示された。従って、1-N型イミノ糖であっても適切なOH基の配位をもつ化合物をデザインしなければ、β-glucocerebrosidaseに対する優れた高親和性化合物を得ることができないことが明らかとなった。特にC3 位およびC4位OH基のOH基は、β-glucocerebrosidaseとの親和性および化合物自体の立体安定性に大きく関与していると推察される。これら情報をもとに今年度は、リード化合物としてisofagomineと同じ1-N型イミノ糖構造を持つcalystegine類等をベースとして、より選択的かつ安定性に優れた化合物のデザインを行う予定である。更に、azetidine型やazepane型など、母核構造が異なる複数の化合物についてもβ-glucocerebrosidaseに対する親和性を示す物がないか積極的に合成およびスクリーニングを行う予定である。さらに、比較的強い親和性が得られた化合物については、変異酵素の安定性に及ぼす効果を解析するとともにモデル細胞を用いたシャペロン効果の評価についても順次行っていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、引き続きβ-glucocerebrosidaseに対し高親和性を示す化合物の探索と構造活性相関の検討ならびにイミノ糖の結合部位および結合様式の解析とシミュレーションデザインをおこなう。従って、化学合成し、ライブラリーを作製するための薬品およびガラス器具等、必要な経費を配分する。また、β-glucocerebrosidaseとの親和性を測定するために必要な酵素、基質など酵素化学的研究が十分に行えるよう経費を配分する。
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