【目的】アシネトバクターが産生するシデロフォアであるアシネトバクチンの構造は,今年度まさに確定されたといって過言ではない。一方で,同時に本化合物を含む誘導体を多種多様にわたって合成する合成法が見出されたことから,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)も含めた耐性菌に対する抗菌スクリーニングを実施しつつ,誘導体合成を行う。 【結果】アシネトバクチンの広範に応用可能な一般的全合成法を完了した。ここで,過去に報告されていた構造に誤りがあることを追認した。本原因は,過去に報告されていた構造が熱的に変化し,転位反応を起こして新規骨格に変化することを明らかにすることができた。訂正された構造と抗MRSAとの相関を調査すべく,アシネトバクチンの合成・活性研究を行った。アシネトバクチンの構造に存在するイミダゾール環に注目し,これらをベンゼン環に変換した数種の化合部を合成できた。最も単純な講座であるフェニル基,およびp-ヒドロキシフェニル基を有する誘導体には抗MRSA活性は無かった。現在,鉄キレータにその存在がよく知られているカテコール基に変換した誘導体の合成を完了しつつあり,本化合物の抗MRSA活性についてスクリーニングを行う予定である。
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