研究課題/領域番号 |
23590130
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松浪 勝義 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (70379890)
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研究分担者 |
大塚 英昭 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 名誉教授 (00107385)
杉本 幸子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (60549012)
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キーワード | 抗インフルエンザ活性 |
研究概要 |
モクレイシMicrotropis japonica、ナツツバキStewartia pseudocamellia、イランイランノキCananga odorata、シシアクチArdisia quinquegona、トゲイヌツゲScolopia oldhamiiなどの植物のほか、インドネシア産の海綿Phyllospongia sp.を研究対象に活性成分の探索研究を行った。その結果、モクレイシから新規トリテルペンを14種、ナツツバキから新規サポニンを6種、イランイランノキから3種の新規リグナン、シシアクチからは新規ベンゾキノンを11種と新規トリテルペンを3種、海面からは新規スカラレン型セスタテルペンを14種単離した。得られた化合物の化学構造は、NMR、MS、IR、UVなどのスペクトルデータの解析、X線結晶構造解析、改良Mosher法などの化学的方法により決定した。次に、得られた化合物についてインフルエンザA型ウイルス(Influenza A /Udorn/72 (H3N2) )に対するCPE(細胞変性効果)の程度を評価した。その結果、モクレイシから単離したトリテルペン1種に強い活性が見られたほか、海綿から得られた数種の化合物にも抗インフルエンザウイルス活性が見い出された。ナツツバキから単離したサポニン類にも弱い抗ウイルス活性が見られたが、細胞毒性も同時に見られており、有効濃度域は狭いものであった。一方、モクレイシ由来の化合物は細胞毒性を示さない濃度よりかなり低濃度でも抗ウイルス活性を示していることから、興味深い化合物が得られたと考えている。現在、より詳細に濃度検討を行い、これらの化合物の構造活性相関を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5種類の植物に加えて海綿1種の成分探索研究を行い、多数の新規化合物を単離・精製し、その化学構造会をスペクトルデータなどの詳細な解析により明らかにすることができた。これらの成果はすでに、日本薬学会年会、日本生薬学会、日中韓生薬シンポジウムなどの国際学会などで複数発表し、また、それぞれについて国際学術誌への投稿準備を進めており、十分な成果が得られている。また、この研究の過程で見出したモクレイシ由来の化合物は単なる単離精製・構造決定・活性評価にとどまらず、抗ウイルス活性のメカニズム解析や他のウイルスなどへの活性評価を通じた特異性の解析など新たなテーマをもたらす可能性があり、非常に興味深い化合物が得られたと判断している。以上のような点からおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
①今回、活性が見られた化合物および構造化学的に類似性が見られる他の化合物をピックアップし、より、詳細な濃度設定により、構造活性相関を検討する。 ②モクレイシに関して、さらに未解析画分について活性物質の探索を進める。 ③今回用いたのは葉部であり、現在、すでに材部について研究を着手しており(葉と材では成分が異なることが多く、より活性の強い化合物が得られる可能性がある)、活性成分の探索研究を進める。 ④今回用いているインフルエンザA型ウイルス(Influenza A /Udorn/72 (H3N2)に加えてインフルエンザB型やパンデミック株についても検討を行い作用スペクトルを明らかにする
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次年度の研究費の使用計画 |
①および④には細胞培養に必要な培地、血清、抗生物質などの試薬類、滅菌プラスティックディッシュなどの培養器具が必要。 ②および③には各種の有機溶媒やカラムクロマト担体のほか、NMR測定用の重水素化溶媒、共通機器であるNMRの使用料、MS測定費用などが必要。 いずれも、研究室保有の機器および大学共通機器で対応するため高額備品等の購入はなく、試薬などの消耗品が中心である。また、最終年度であるため、研究成果を国際学術論文誌などに投稿するなどの印刷費が必要である。
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