研究課題/領域番号 |
23590131
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡本 良成 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (20194409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / 浸潤・転移 / ADAM17 / 亜鉛配位子 |
研究概要 |
腫瘍細胞の浸潤・転移に関与する蛋白として,上皮間葉転移に関与する転写因子Snailと,細胞の移動に関連するプロテアーゼADAM10およびADAM17が見いだされた.これらの蛋白は,その機能を発現するためには亜鉛が必須であり,亜鉛配位子を蛋白に作用させることができればその機能を阻害することができると考えられる. 本研究では,我々が開発した亜鉛配位子にこれらの蛋白を特異的に認識する側鎖を連結した化合物を設計・合成することで,癌の浸潤・転移を阻害する新規阻害剤の創製を目的とした. 今年度は,ADAM17認識部位としてキノリン骨格を持った側鎖の導入を検討し,側鎖アミノ基へアミド結合を介して連結することができた.また,これまでの研究では配位子のピリジン環の4位にあるアミノ基に対して側鎖を導入することは困難であったが,トリホスゲンを利用することで,末端に水酸基を持つ側鎖をカルバメートを介して導入することが可能であることがわかった.この事により,これまで合成した化合物とは異なり,配位に関与しないと考えられる部位に認識部位を導入することが可能となった.今後,水酸基やアミノ基を持つ認識部位を合成し,この方法で配位子に連結していく.これらの化合物は,活性の向上や新しい活性発現などが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADAM17認識部位としてキノリン骨格を持った配位子の合成に成功した.また,予備的な実験ながら,これまで側鎖の導入が困難であったピリジン環4位のアミノ基に対し,トリホスゲンを利用することで,末端に水酸基を持つ側鎖の導入が可能であることを見いだした.
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今後の研究の推進方策 |
これまで側鎖の導入が困難であったピリジン環の4位アミノ基に対して,トリホスゲンを利用することで認識部位を導入することができることがわかったので,末端部分にアミノ基や水酸基を持つ認識部位を合成し,4位アミノ基への認識部位導入を進めていく.このことにより,金属配位子の配位には関与しないと思われる部位に認識部位を連結することが可能となるので,活性の向上や新たな活性の発現等が期待される. また,側鎖部分にシステインを導入した配位子の合成にも着手する.この配位子はカルボン酸を持っているので,前述したアミノ基を持つ認識部位をアミド結合を介して連結することが可能である.
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次年度の研究費の使用計画 |
ADAM17の認識部位として末端にアミノ基や水酸基を持つ化合物の合成,また側鎖にシステインを持つ配位子の合成など有機合成に必要な試薬やガラス器具等の購入に使用する.その他,研究成果発表や情報収集のための学会参加,研究打合せ等の旅費として使用する.
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