本申請課題では、ヒトがんウイルスEpstein-Barr virus/EBVに対する新規分子標的薬の開発を目指し、具体的にはウイルスDNAに結合するピロールイミダゾールポリアミド化合物に着目し、EBV発がんに重要なEBNA1蛋白質のDNA結合を抑制する抗EBNA1阻害剤の開発を目的とした。 昨年度までの研究で、EBウイルスのOriP DNA配列に結合してEBNA1の機能を阻害する化合物の開発を目指し、OriP 上のEBNA1結合塩基配列に特異性高く結合するピロールイミダゾールポリアミド化合物のデザインと合成を行い、実際にマイクロモルオーダーでoriP DNAに結合するポリアミド化合物が合成された。さらにEMSAアッセイにおいて、一つのポリアミド化合物に、EBNA1-DNA結合の阻害活性が確認された。EBNA1のDNA結合に対する阻害活性が見いだされた化合物については、その標的となるDNA塩基配列を確定させるために、in vitroのFootprinting assayを行い、確かに目的の標的配列に結合している事を確認した。 以上の結果を踏まえ、本年度は、同定したポリアミド化合物の細胞毒性、ヒト初代B細胞を用いたEBV感染実験を行い、その薬理作用を検討した。その結果、細胞に対する非特異的毒性は少なく、EBV感染細胞において選択性高く細胞増殖阻害作用を示す化合物DSE-3が同定できた。またDSE-3が、初代B細胞へのウイルス感染と形質転換能に対しても顕著な抑制作用を持つ事が確認された。以上のことから、実際にEBNA1のDNA結合阻害活性を持ち、EBV感染に対する細胞悪性化に対する抑制作用を持つ化合物が合成できたと考えられる。
|