ビタミンD受容体のリガンド結合ポケットにおける3つの構造可変部位に着目し、それらの構造を制御するリガンドを創製することで、選択的作用をもつリガンド開発をめざした。3つの可変部位のうち、ブチル基を収容することが知られていたキャビティーAの構造を制御する化合物は多数合成できた。それらは、ビタミンD受容体のアゴニスト、パーシャルアゴニストからアンタゴニストまで幅広い活性を示した。すなわち、多彩な活性化合物を創製できた。ビタミンD受容体リガンド結合領域との共結晶化を試みた結果、いくつかの複合体の良好な結晶が得られた。それらを用いてX線回折実験を行ったところ、高い分解能の回折データを得た。計算・精密化の結果、電子密度マップよりパーシャルアゴニストの一つにおいて興味深い結果を得た。すなわち、この化合物は、単結晶中に、側鎖のブチル基がブチルポケットに収容されるアゴニスト型(30%)と、水酸基を持つオリジナル側鎖がブチルポケットに収容されるアンタゴニスト型(70%)の2つの配座で存在することが明らかになった。結晶構造の結果から、この化合物がパーシャルアゴニストとしてふるまった理由は、2つの配座が混在することによる活性化の和によるものと考えられた。本研究は、核内受容体/リガンド複合体中の単結晶中にアゴニスト結合コンフォマーとアンタゴニスト結合コンフォマーの両方を補足した初めての例であり、パーシャルアゴニズム発現機構の分子基盤となると考えられる。本成果は、Journal of Medicinal Chemistry (DOI: 10.1021/jm500392t)に受理された。
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