研究課題/領域番号 |
23590136
|
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
須原 義智 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (30297171)
|
キーワード | ビタミンK / メナキノン-4 / 脳神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 再生医療 / イソプレノイド / ニューロン / 分化誘導活性 |
研究概要 |
我々は脂溶性ビタミンであるビタミンKがマウス由来の脳神経前駆細胞をニューロンやアストロサイトへ分化誘導させることを明らかにしてきた。この知見を基に、脳神経幹細胞の分化を制御してニューロンへの分化を選択的にかつ強力に誘導する低分子化合物を創製し、脳神経変性疾患の治療へ応用する研究を行っている。 2011年度中にはビタミンKの化学構造に着目して、イソプレン側鎖の末端部分にフェニル基やナフチル基などの脂溶性の官能基を導入した化合物を複数合成した。その結果、イソプレンの繰り返し構造がメナキノン-3と同じであり、かつ側鎖末端部分にm-トリル基をはじめ、フェニル基にアルキル基が結合した構造を有するものに最も強いニューロンへの分化誘導活性が認められた。 そこで、2012年度ではこのトリル基に着目し、トリル基中のフェニル基部分に結合しているメチル基の数を増加させたり、エチル基やブチル基のようにアルキル基部分を伸長した誘導体を系統的に合成して、さらに分化誘導活性の増強を狙った。また、これまでに得られた化合物の構造と分化誘導活性のデータから、in silicoによるQSAR (Quantative Structure-Activity Relationship) 解析によって、新規に合成した化合物の分化誘導活性を予測した。その結果、フェニル基に結合しているアルキル基部分のかさ高さが、活性を増強させるために必要であることが明らかとなった。現在、これらの化合物の神経幹細胞からニューロンへの分化誘導活性を調べている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、ビタミンK誘導体のイソプレン末端部分に置換基を導入した化合物を系統的に合成し、当初の目標であった化合物ライブラリーの一部を作成することができた。我々はすでに昨年度までに、m-トリル基を導入した誘導体がコントロールに比べて約2倍の分化誘導活性をもつことを明らかにしてきた。この知見を基にしてさらに強い活性をもつ誘導体の合成を行っており、現在までにm-トリル基のアルキル基部分を、他の置換基に変換した化合物を多種類合成することができた。また、in silicoでのQSAR解析による、これら化合物の分化誘導活性を予測できる手法を開発した。 一方、脳神経幹細胞からニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトへの分化誘導活性の測定方法として、これまでに行っていた蛍光染色による定量法に加えて新たにPCR法による高感度な評価方法を開発した。以上のことから、我々の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今回までに得られた知見を基に、ビタミンKをリード化合物としてさらに構造修飾を行った誘導体の化合物ライブラリーを作製し、より強力な分化誘導活性をもつ化合物を見つけ出していく予定である。具体的には、これまでに行った側鎖末端部分を修飾した化合物を合成するのみではなく、側鎖部分を他の簡便な構造体に置き換えて簡略化したものや、ナフトキノン環部分を修飾した誘導体をデザイン・合成する予定である。また、分化誘導活性の測定方法においては、昨年度に引き続き、これまでにマウス胎児大脳由来の初代培養細胞以外に株化細胞を用いた実験系も検討し、より簡便に活性評価ができる評価系も立ち上げたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究費は主に消耗品として合成用試薬、合成用ガラス器具類、細胞培養用器具類などに使用する予定である。また、研究成果を発表するための費用として、学会での成果発表のための国内旅費や論文誌への投稿費用、その他研究を進めるにあたって必要なサンプル輸送代などの通信費として使用することを計画している。
|