研究課題
本研究は、アルツハイマー病などの脳神経変性疾患によって失われてしまった脳神経を「再生させる」という考え方に基づき、脳神経の素となる「脳神経幹細胞」を「脳神経細胞(ニューロン)」へ強力に分化させる作用をもつ低分子化合物の開発を行うことを目的としている。すなわち、ニューロンへの分化を従来の再生医療研究で行われている「遺伝子導入」ではなく、安全性の高い「化合物」によって制御・誘導し、脳神経を再生することを目指している。すでに我々は、脂溶性ビタミンのひとつであるビタミンKがニューロン選択的に分化を誘導することを見出しているが、活性が弱いのが課題である。そこで、ビタミンKの側鎖部分を系統的に修飾することによって、より強い分化誘導活性をもつ化合物の創製を行った。誘導体の設計にあたり、脳は脂溶性の器官であるため作用の増強を期待してビタミンKの側鎖末端部に脂溶性の官能基を導入した誘導体を合成することにした。そこで、脂溶性の官能基としてベンゼン、ナフタレン、ビフェニルを選択した。各誘導体の合成方法は、各種の官能基を導入した側鎖部分を別途合成した後にナフトキノン環とカップリングさせる方法により行った。合成した化合物群のニューロンへの分化誘導作用の評価は、マウス胎仔大脳由来の神経幹細胞を用いて行った。調製した細胞に各化合物を10-6 Mの濃度で添加し、ニューロンとアストロサイトへの分化誘導作用を検討した。その結果、ニューロンへの分化誘導活性はm-メチルフェニル基をもつ誘導体に最も強い分化誘導作用が見られた。この化合物は天然のビタミンKの2倍の活性を有することが明らかとなった。現在、これらの化合物の作用機序を検討し、得られた情報を基にしてin vivoレベルで効果のある化合物の創製を目指している。
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