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2012 年度 実施状況報告書

アルツハイマー病克服のための統合的創薬研究

研究課題

研究課題/領域番号 23590137
研究機関神戸学院大学

研究代表者

浜田 芳男  神戸学院大学, 薬学部, 研究員 (70424968)

キーワード酵素阻害剤 / 凝集阻害剤 / アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / BACE1
研究概要

日本は急速に高齢化社会に移行しており、アルツハイマー病患者の増加は急を要する社会問題となっている。アリセプト(ドネペジル)などいくつかの薬剤が認可されているが、これらは対症療法薬であり、未だアルツハイマー病の根本的治療薬は存在しない。本研究はアルツハイマー病克服を目指し、発症の原因物質であるとされているアミロイドβペプチド(Aβ)の産生に関与するβ-セクレターゼ(BACE1)の阻害剤およびAβ凝集阻害剤を開発することを目的とする。そのため in-silico創薬における新しい方法論の導入からアルツハイマー病の発症メカニズムの解明に有用なケミカルバイオロジー研究用ツールの開発まで統合的かつ先駆的研究を行ない、アルツハイマー病の根本的治療薬の候補化合物を複数創製することにある。
① 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
Arg235との相互作用は阻害剤の阻害活性発現に重要な意味をもっていると考えられ、Arg235側鎖との相互作用に着目して阻害剤の最適化を進め、強力な阻害活性を有する化合物を設計した。また、世界で初めてBACE1阻害活性を有するペプチド化合物を見出した。これは次世代BACE1阻害剤開発のためのリード化合物として有用である。
② Aβの凝集阻害剤
既知のAβ凝集阻害剤はそれぞれAβの特定の部位を認識してAβ分子に結合するが、Aβにはモノマーからオリゴマー、高分子の凝集体まで様々な会合状態よる分子種が存在し、これらの化合物は神経毒性があるとされているAβオリゴマーを特異的に認識しているわけではなく、薬効の評価や薬物としての有効性に大きな問題点がある。本研究代表者はNMRによるAβオリゴマーの立体構造を基にして、Aβオリゴマーを認識する凝集阻害剤を設計し、阻害活性を有するいくつかの化合物を見出した。本研究の成果はアルツハイマー病治療薬開発に向けて大きな前進であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当該年度では新規骨格を有する阻害剤の探索に重点を置き、いくつかの新規化合物を見出しており、本研究は順調に進展、もしくは当初の計画以上に進展している。
① 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
すでに見出しているイソフタル酸型阻害剤および前年度のin-silicoで設計した化合物の最適化研究を行なった。イソフタル酸型阻害剤においてはP2部位がニトロ基もしくはメチル基のような小さな疎水性基のものが強力な阻害活性を示した。In-silicoスクリーニングで得られた化合物は低分子サイズで新規骨格を有し、良好なclogP値を有しているが、まだ阻害活性は弱く(IC50=>100nM)、さらなる最適化が必要であると思われる。またこの研究過程で、世界で初めてBACE1阻害活性を有するペプチドを見出している、これらのペプチドは低分子サイズであるため、次世代BACE1阻害剤開発のためのリード化合物として重要であり、また、発症メカニズム解明のためのケミカルバイオロジー研究のツールとして有用であると思われる。
② Aβの凝集阻害剤
すでに見出しているペプチド型Aβ阻害剤のアミノ酸変換を行なった。その結果、疎水性アミノ酸の側鎖が阻害活性発現に重要であることを見出した。また、アミノ酸の一部を芳香族化合物に変換した化合物を設計し、凝集阻害活性を有することを確認した。これらの化合物は疎水性のため溶解性に問題があるが、従来のAβ凝集阻害剤と異なりAβオリゴマーに結合するよう設計されており、アルツハイマー治療薬の候補化合物として期待される。

今後の研究の推進方策

①低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
イソフタル酸型阻害剤においては強力な阻害活性を有する化合物を複数見出しており、今後、脳-血液関門を通過しうる化合物の設計に重点を移す。多くの薬剤において脳-血液関門を通過しうる化合物は細胞膜上に存在するABCトランスポーターの一つであるP糖蛋白質の基質になるかが重要な鍵となっており、論理的に設計することは困難である。そこで、in-silicoスクリーニングで得られた新規骨格を有する化合物を検討する。得られた化合物の阻害活性はまだ弱いが、P糖蛋白質との結合を回避できる可能性があり、脳-血液関門を通過しうる実用的な治療薬の候補化合物を開発したい。
② Aβの凝集阻害剤
前年度に引き続き、in-silicoで設計した凝集阻害剤の最適化を行なう。ある程度構造活性相関研究は進んでいるが、さらに阻害活性発現に構造を特定し、最適化および低分子化研究を行なう。本化合物はAβオリゴマーを認識するよう設計されているため、ある程度の分子サイズが必要だと思われるが、阻害活性発現のための最小の分子サイズを見極めたい。また、Aβオリゴマーを認識する凝集阻害剤は、抗体を除きおそらく世界初であり、凝集阻害メカニズムおよび従来のAβ阻害剤の凝集効果との差異に興味が持たれる。

次年度の研究費の使用計画

研究前半ではin-silico設計に重点を置いたため、薬品、消耗品などの購入が予定より下回った。次年度では、より実用的な治療薬の候補化合物の探索・最適化研究を行なうため、実験用装置、ガラス器具、試薬などの購入を考えている。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Advances in the identification of β-secretase inhibitors2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Expert Opinion on Drug Discovery

      巻: 印刷中 ページ: 1-23

    • DOI

      10.1517/17460441.2013.784267

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The application of bioisosteres in drug design for novel drug discovery: focusing on acid protease inhibitors2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Expert Opinion on Drug Discovery

      巻: 7 ページ: 903-922

    • DOI

      10.1517/17460441.2012.712513

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel BACE1 inhibitors possessing a 5-nitroisophthalic scaffold at the P2 position2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Tomoya Nakanishi, Kenji Suzuki, Ryoji Yamaguchi, Takashi Hamada, Koushi Hidaka, Shoichi Ishiura, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters

      巻: 22 ページ: 4640-4644

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2012.05.089

    • 査読あり
  • [雑誌論文] BACE1 Inhibitor Peptides: Can an Infinitely Small kcat Value Turn the Substrate of an Enzyme into Its Inhibitor ?2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Shoichi Ishiura, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      ACS Medicinal Chemistry Letters

      巻: 3 ページ: 193-197

    • DOI

      10.1021/ml2002373

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tripeptidic BACE1 inhibitors devised by in-silico conformational structure-based design2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Harichandra D. Tagad, Yoshinori Nishimura, Shoichi Ishiura, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters

      巻: 22 ページ: 1130-1135

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2011.11.102

  • [学会発表] Ritter反応を用いたBACE1阻害ペプチドの合成2013

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男、Harichandra D. Tagad、木曽良明
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130327-20130330
  • [学会発表] 分子認識を基盤とした創薬研究 ~ BACE1阻害剤の開発2013

    • 著者名/発表者名
      濱田芳男
    • 学会等名
      生物分子機能研究会セミナー2013 「生命分子を基盤とする創薬科学」
    • 発表場所
      長浜
    • 年月日
      20130308-20130308
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of small BACE1 inhibitor peptides2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Yoshiaki kiso
    • 学会等名
      The 17th Takeda Symposium on Bioscience
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121206-20121207
  • [学会発表] Design and Synthesis of small BACE1 inhibitor peptides2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Harichandra D. Tagad, Yoshiaki kiso
    • 学会等名
      32th European Peptide Symposium
    • 発表場所
      Athens, Greece
    • 年月日
      20120902-20120907
  • [学会発表] Small-sized BACE1 inhibitors: In-silico design and synthesis2012

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Harichandra D. Tagad, Yoshiaki kiso
    • 学会等名
      12th Chinese International Peptide Symposium
    • 発表場所
      Shenyang, China
    • 年月日
      20120702-20120706
  • [図書] PETジャーナル 「アルツハイマー病治療薬開発の現状」2013

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男、木曽良明
    • 総ページ数
      3
    • 出版者
      先端医療技術研究所
  • [図書] ペプチド医薬の最前線 第1章総論 「分子認識を基盤とする創薬科学研究」2012

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男、木曽良明
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      シーエムシー出版
  • [図書] 遺伝子医学MOOK21 最新ペプチド合成技術とその創薬研究への応用 「アルツハイマー病治療薬をめざしたBACE1阻害剤の設計と合成」2012

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男、木曽良明
    • 総ページ数
      10
    • 出版者
      メディカルドゥ
  • [備考] 濵田芳男のホームページ

    • URL

      https://sites.google.com/site/pynden/

  • [備考] 神戸学院大学 新着情報 『研究成果がACS Med Chem Lett の表紙を飾りました。』

    • URL

      http://www.kobegakuin.ac.jp/topics/headline_detail.cgi?kanriid=201203028

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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