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2013 年度 実施状況報告書

アルツハイマー病克服のための統合的創薬研究

研究課題

研究課題/領域番号 23590137
研究機関神戸学院大学

研究代表者

浜田 芳男  神戸学院大学, 薬学部, 研究員 (70424968)

キーワード酵素阻害剤 / 凝集阻害剤 / アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / BACE1
研究概要

日本は急速に高齢化社会に移行しており、認知症患者の増加は急を要する社会問題となっている。アリセプトなどいくつかの薬剤が認可されているが、これらは対症療法薬であり、未だ根本的治療薬は存在しない。本研究はアルツハイマー病克服を目指し、発症の原因物質であるとされているアミロイドβペプチド(Aβ)の産生に関与するβ-セクレターゼ(BACE1)の阻害剤およびAβ凝集阻害剤を開発することを目的とする。そのため in-silico創薬における新しい方法論の導入からアルツハイマー病の発症メカニズムの解明に有用なケミカルバイオロジー研究用ツールの開発まで統合的かつ先駆的研究を行ない、アルツハイマー病の根本的治療薬の候補化合物を複数創製することにあると考える。
① 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
BACE1のArg235と阻害剤との相互作用は阻害剤の阻害活性発現に重要な意味をもっていると考えられ、Arg235側鎖との相互作用に着目して阻害剤の最適化を進め、強力な阻害活性を有する化合物をいくつか合成した。また、BACE1阻害活性を有するペプチド化合物を設計し、ペプチドとしては世界最小の分子サイズを有する阻害剤を見出した。これは次世代BACE1阻害剤開発のためのリード化合物として有用である。
② Aβの凝集阻害剤
既知のAβ凝集阻害剤はそれぞれAβの特定の部位を認識してAβ分子に結合するが、Aβにはモノマーからオリゴマー、フィブリルの凝集体まで様々な会合状態よる分子種が存在し、これらの化合物は神経毒性があるとされているAβオリゴマーを特異的に認識しているわけではなく、薬効の評価や薬物としての有効性に大きな問題点がある。固体NMRによりAβオリゴマ凝集体の立体構造がいくつか報告されている。本研究代表者は特定のAβコンホマーに特異的に結合する凝集阻害剤を設計した。本阻害剤は医薬として、また凝集メカニズム解析用ツールとして有用であると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該年度では、ある程度化合物を絞り込み、高活性な阻害剤の開発に重点を置き、いくつかの新規化合物を見出しており、本研究はおおむね順調に進展している。
① 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
すでに見出しているイソフタル酸型阻害剤および前年度のin-silicoで設計した化合物の最適化研究を行なった。イソフタル酸型阻害剤においてはC末端にヘテロ骨格を有する化合物を設計した。従来はこの部分はテトラゾールのような酸性基が必須だったが、酸性基を有しない阻害剤を設計・合成した。本化合物は脳血液関門透過性に関して有望であると思われる。In-silicoスクリーニングで得られた化合物は低分子サイズで新規骨格を有し、良好なclogP値を有しているが、阻害活性の点で、さらなる最適化が必要であると思われる。また、BACE1阻害活性を有する世界最小の分子サイズを有するペプチドを見出している、これらは次世代BACE1阻害剤開発のためのリード化合物として有用である。
② Aβの凝集阻害剤
すでに見出しているペプチド型Aβ阻害剤のアミノ酸変換を行なった。アミノ酸配列が阻害活性に重要であり、本化合物が特定のAβコンホマーを認識していることが判明した。本化合物を使ったAβの凝集メカニズムやアルツハイマー病発症メカニズムの解析が期待される。

今後の研究の推進方策

①低分子化BACE1阻害剤の創薬研究
化合物を絞り込み、脳-血液関門を通過しうる化合物の設計に重点を移す。多くの薬剤において脳-血液関門を通過しうる化合物は細胞膜上に存在するトランスポーターの一つであるP糖蛋白質の基質になるかが重要な鍵となっており、論理的に設計することは困難である。脳-血液関門の透過性を調べるための動物を使ったスクリーニングは、薬物開発スピードの点であまり現実的ではない。まず細胞を使った評価系で、ある程度化合物を絞り込む。
② Aβの凝集阻害剤
前年度に引き続き、最適化および低分子化研究を行なう。本化合物はAβオリゴマーを認識するよう設計されているおり、Aβの凝集メカニズム解析研究に有用であるが、医薬として考えた場合、低分子化および脳-血液関門の透過性のための最適化研究は重要であり、よりdrug-likeな化合物を設計する。

次年度の研究費の使用計画

本研究課題はアルツハイマー病治療薬の候補化合物を開発することである。本補助事業期間では合成およびインビトロの活性評価までは計画通りの進捗状況であったが、細胞および動物(モデルマウス)を使った評価実験は、外部の研究者との共同研究であり、時間的にラグが生じ、どうしても本補助事業期間内では完了しない。また、細胞および動物を使った評価結果によっては、薬物設計の変更の可能性もあり、既存化合物の修飾・合成もしくは、別の系統の化合物の合成の必要性もある。
上記に述べたように、細胞および動物を使った評価実験のため、化合物の再合成および精製に必要な試薬およびガラス器具を購入する。既存化合物の修飾・合成もしくは、別の系統の化合物の合成のための薬物設計に必要な、すでにライセンスの切れている分子設計ソフトウェアのライセンス更新費用が必要になる。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] アルツハイマー病治療薬開発の現状2014

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男、木曽良明
    • 雑誌名

      PETジャーナル

      巻: 25 ページ: 31-34

  • [雑誌論文] Structure-activity relationship study of BACE1 inhibitors possessing a chelidonic or 2,6-pyridinedicarboxylic scaffold at the P2 position2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Kenji Suzuki, Tomoya Nakanishi, Diganta Sarma, Hiroko Ohta, Ryoji Yamaguchi, Moe Yamasaki, Koushi Hidaka, Shoichi Ishiura, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters

      巻: 26 ページ: 618-623

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2013.12.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 創薬研究における量子化学的相互作用の重要性と β-Secretase 阻害剤の設計2013

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男
    • 雑誌名

      YAKUGAKU ZASSHI

      巻: 133 ページ: 1113-1120

    • DOI

      10.1248/yakushi.13-00179

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel BACE1 inhibitors with a non-acidic heterocycle at the P1′ position2013

    • 著者名/発表者名
      Kenji Suzuki, Yoshio Hamada, Jeffrey-Tri Nguyen, Yoshiaki Kiso
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry

      巻: 21 ページ: 6665-6673

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2013.08.016

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規トング型アミロイドβ凝集阻害剤の設計2014

    • 著者名/発表者名
      濱田芳男、宮本奈緒子、木曽良明
    • 学会等名
      日本薬学会第134年会
    • 発表場所
      熊本
    • 年月日
      20140319-20140320
  • [学会発表] The significance of protein structure data set choices for in-silico drug discovery: Design of BACE1 inhibitors2014

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada
    • 学会等名
      International Symposium on Compound Design Technologies
    • 発表場所
      東京・大阪
    • 年月日
      20140319-20140320
    • 招待講演
  • [学会発表] 2,6-ピリジンジカルボン酸型BACE1阻害剤のSAR研究2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Shoichi Ishiura, Yoshiaki Kiso
    • 学会等名
      第31回メディシナルケミストリーシンポジウム
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20131120-20131122
  • [学会発表] Structure-Activity Relationship Study Possessing a 2,6-Pyridinedicarboxylic Scaffold2013

    • 著者名/発表者名
      濱田芳男、石浦章一、木曽良明
    • 学会等名
      4th Asia-Pacific International Peptide Symposium
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20131106-20131108
  • [学会発表] In-silico conformational structure-based design による低分子BACE1阻害剤の設計2013

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男
    • 学会等名
      生命分子機能研究会2013学術集会
    • 発表場所
      長浜
    • 年月日
      20130919-20130920
  • [学会発表] 量子化学的相互作用を考慮したBACE1阻害剤の設計2013

    • 著者名/発表者名
      濵田芳男
    • 学会等名
      第18回日本病態プロテアーゼ学会学術集会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20130816-20130818
  • [学会発表] Design of Small-Sized Peptides with BACE1 inhibitory activity2013

    • 著者名/発表者名
      Yoshio Hamada, Yoshiaki Kiso
    • 学会等名
      23th American Peptide Symposium
    • 発表場所
      Waikoloa, USA
    • 年月日
      20130622-20130627
  • [備考] 濵田芳男のホームページ

    • URL

      https://sites.google.com/site/pynden/

  • [備考] 神戸学院大学 新着情報:研究成果が『ACS Med Chem Lett』の表紙を飾りました。

    • URL

      http://www.kobegakuin.ac.jp/topics/headline_detail.cgi?kanriid=201203028

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公開日: 2015-05-28  

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