研究概要 |
Salacinol (1) は, インド・スリランカにおけるアーユルベーダ医学で用いられている糖尿病の特効薬物 (Salacia reticulata) から単離された極めて強い血糖値上昇抑制(α-グルコシダーゼ阻害)作用を示す化合物である. 科学研究費の補助を受け行った今回のプロジェクト( 1 の構造活性相関研究)において, 前年度までに Salacinol (1) の側鎖部 3’位の疎水性化(アルキル化, ベンジル化等)が, 1 の10倍程度強い活性を示すことを明らかにした。したがって, 置換基の改良によりさらなる活性強度の増強が見込める可能性が示唆された. そこで, 最終年度では, 疎水性化置換基として, ベンジル基の o-, m-, p-置換体(置換基:メチル, 塩素, トリフルオロメチル, ニトロ基など) を in silico 計算化学を用いて数種デザインし, その合成および活性評価を行った. その結果, 合成した化合物は Salacinol (1) を凌ぐ強い阻害活性を示すことが明らかになった. また, いずれの置換体においても o-置換体が相当する m-, p-置換体に比べ強力な阻害作用を示した. 中でも, アルキル中でも, 3’-O-(o-ニトロベンジル)体が 1 の約 40 倍強力な活性を示し, その活性強度が現行の糖尿病治療薬, acarbose, voglibose を凌駕することを明らかにした.
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