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2012 年度 実施状況報告書

核内受容体の作用分離を指向したレチノイン酸アナログの開発

研究課題

研究課題/領域番号 23590141
研究機関神戸薬科大学

研究代表者

和田 昭盛  神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (80158683)

キーワード9cis-レチノイン酸アナログ / ヘテロダイマー / クロスカップリング / テルペン誘導体 / ビニルトリフラート / スズオレフィン / RXR
研究概要

RXRリガンド分子は各種ヘテロダイマーと結合して脂質代謝異常症や糖尿病のような生活習慣病の改善に効果を示すことや、ガンやアルツハイマーに対する治療薬候補品として期待されていることから、RXRを標的とした医薬品の創出が近年検討されている。これまで、9cRAを母核とする誘導体の構造活性相関研究を系統的に行っており、疎水性ユニットであるシクロヘキセン部を各種環状モノテルペノイドに置き換えた誘導体において高いRXRアゴニスト活性を示すことを見出している。環状モノテルペノイドの中でも、(-)-メントンを組み込んだ誘導体MentViMeに強力なRXRアゴニスト活性が見られたことから、更なる活性の増強と物理的安定性の向上を目指し、(-)-メントンとベンゼン環が縮環した二環性ハイブリッド誘導体MentPhMe及びMentPhEtを新規RXRアゴニストとしてデザインし、その合成法の確立と生物活性の評価を行った。
合成法としては、(-)-メントンから4工程で脂溶性部位に相当するトリフラート体を、プロパルギルアルコールから3工程で共役スズエステルを調製し、それらを我々が見出したCsFによって促進されるStilleカップリング条件。で連結し、最後に加水分解することで目的とする9-cis-レチノイン酸誘導体MentPhMe及びMentPhEtの合成を達成した。
MentPhMeについてRXR及びRAR転写活性能をレポータージーンアッセイにて測定した結果、RXR及びRAR活性化能がいずれのアイソタイプ(α、β、γ)においてもEC50値が3-20 nMと非常に強力なアゴニスト活性を有し、MentViMeに比較して活性が増強されることを見出した。また縮環した化合物でエチル基に変えることにより、RXR活性化の上昇、RAR活性の低下がみられた。更に、ヘテロ二量体のうちLKR/RXR活性の上昇することが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(-)-メントンとベンゼン環が縮環した二環性ハイブリッド誘導体MentPhMeの合成法を応用し、9位のメチル基をエチル基に変えた誘導体MentPhEtも合成できた。従って、本方法は、9位置換基を種々変えた誘導体合成にも応用できることが判明し、更なる新規RXRアゴニストのデザインと実際の合成が可能になったと考えている。また、縮環した化合物でメチル基からエチル基に変えることにより、RXR活性化の上昇、RAR活性の低下がみられたこと、ヘテロ二量体のうちLKR/RXR活性の上昇することが判明したことから、新たに設計した化合物については、より高いサブタイプ選択性やヘテロ二量体選択性が期待できようになった。

今後の研究の推進方策

テルペンとベンゼンが縮環した化合物で9位置換基を変えることにより、ヘテロダイマー選択性がより顕著になることが判明したので、更なる誘導体を合成することにより選択性を高くすること可能と思われる。そこで9位メチル基をトリフルオロメチル基やフルオロ基に変えたアナログを合成し、転写活性やヘテロダイマー選択性について測定する。また、これらの活性の相違が核内受容体内でのリガンド分子との相互作用に基づくことが予想されるため、コンピューターによるドッキングシュミレーションを行って解析すると共に、その結果にもとづいたアナログ化合物のデザインと実際の合成を実施する。
第3に想定したヘテロ環とベンゼン環が縮合した化合物については、モノプロパルギルエーテル化したヒドロキノン誘導体のヨード環化反応によりクロマン骨格を構築後、レチノイン酸アナログへの変換を達成する。得られたアナログ化合物については、RXRやRARの転写活性ばかりでなく、サブタイプ選択性あるいはヘテロ二量体選択性について検討する。

次年度の研究費の使用計画

各種アナログ化合物の合成を達成するため、多種類の試薬や大量の溶媒の使用が見込まれる。また、化合物の分離・精製するためのシリカゲルやカラム、更には反応容器等のガラス器具類が必要なため、大部分(8割程度)は消耗品の購入にあてる予定である。さらに、研究成果の発表のため、学会への参加費や旅費、学術雑誌への投稿費や別刷り費としてそれぞれ1割ずつ程度を見込んでいる。

  • 研究成果

    (22件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (14件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Substituent effect of bis(pyrimidines)iodonium complexes as iodinating reagent: Control of the iodocyclization/oxidation process2013

    • 著者名/発表者名
      Okitsu, T.; Yumitate, S.; Sato, K.; In, Y.; Wada, A.
    • 雑誌名

      Chem. Eur. J.

      巻: 19(16) ページ: 4992-4996

    • DOI

      10.1002/chem.201204423

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Correlation between nuptial colors and visual sensitivities tuned by opsins leads to species richness in sympatric Lake Victoria cichild fishes2012

    • 著者名/発表者名
      R. Miyagi, Y. Terai, M. Aibara, T. Sugawara, H. Imai, H. Tachida, S. I. Mzighani, T. Okitsu, A. Wada, N. Okada
    • 雑誌名

      Mol. Biol. Evol

      巻: 29(11) ページ: 3281-3296

    • DOI

      10.1093/molbev/mss139

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tandem migration-carboalkoxylation of o-isocyanophenyl acetals leading to benzoxazoles2012

    • 著者名/発表者名
      Okitsu, T.; Nagase, K.; Nishio, N.; Wada, A.
    • 雑誌名

      Org. Lett.

      巻: 14(3) ページ: 708-711

    • DOI

      10.1021/ol207175a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure-activity relationship of novel menaquinone-4 analogues: Modification of the side chain affects their biological activities2012

    • 著者名/発表者名
      Suhara, Y.; Hanada, N.; Okitsu, T.; Sakai, M.; Watanabe, M.; Nakagawa, K.; Wada, A.; Takeda, K.; Takahashi, K.; Tokiwa, H.; Okano, T.
    • 雑誌名

      J. Med. Chem.

      巻: 55(4) ページ: 1553-1558

    • DOI

      10.1021/jm2013166

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lipophilic amines as potent inhibitors of N-acylethanolamine-hydrolyzing acid amidase2012

    • 著者名/発表者名
      Yamano, Y.; Tsuboi, K.; Hozaki, Y.; Takahashi, K.; Jin, X.-H.; Ueda, N.; Wada, A.
    • 雑誌名

      Bioorg. Med. Chem.

      巻: 20(11) ページ: 3658-3665

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2012.03.065

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stereoselective total synthesis of the acetylenic carotenoids alloxanthin and triophaxanthin2012

    • 著者名/発表者名
      Yamano, Y.; Chary, M. V.; Wada, A.
    • 雑誌名

      Org. Biomol. Chem

      巻: 10(20) ページ: 4103-4108

    • DOI

      10.1039/c2ob25321f

    • 査読あり
  • [学会発表] 抗炎症・鎮痛作用を持つ脂質メディエーターであるN-アシルエタノールアミンを加水分解する酸性アミダーゼの阻害剤の開発2012

    • 著者名/発表者名
      坪井 一人、山野 由美子、保崎 友紀、高橋 清宏、金 星華、和田 昭盛、上田 夏生
    • 学会等名
      第85回日本生化学会大会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121214-20121216
  • [学会発表] 9-シス-3-アミノレチノールの合成

    • 著者名/発表者名
      和田 昭盛、守行 美郷、山野 由美子
    • 学会等名
      日本ビタミン学会第64回大会
    • 発表場所
      岐阜
  • [学会発表] C15-アレンおよびアセチレントリブチルホスホニウム塩を用いたamarouciaxanthin AおよびBの立体選択的全合成

    • 著者名/発表者名
      山野 由美子、Chary, M. V.、和田 昭盛
    • 学会等名
      第26回カロテノイド研究談話会
    • 発表場所
      函館
  • [学会発表] 立体選択的な9-シス-3-アミノレチナールの合成

    • 著者名/発表者名
      和田 昭盛、守行 美郷、山野 由美子
    • 学会等名
      日本レチノイド研究会第23回学術集会
    • 発表場所
      米子
  • [学会発表] 遠隔不斉誘起型ヨード環化反応の-光学活性なスピロ化合物の合成

    • 著者名/発表者名
      沖津 貴志、村井 ちはる、和田 昭盛
    • 学会等名
      第62回日本薬学会近畿支部総会・大会
    • 発表場所
      西宮
  • [学会発表] 9Z-デメチルレチノイン酸類の効率的合成とその生物活性

    • 著者名/発表者名
      和田 昭盛、沖津 貴志、近野 沙織、辻本 麻里、松浦 直美、中川 公恵、岡野 登志夫
    • 学会等名
      第56回香料・テルペンおよび精油化学に関する討論会
    • 発表場所
      鹿児島
  • [学会発表] Amarouciaxanthin AおよびBの全合成

    • 著者名/発表者名
      山野 由美子、Chary, M. V.、和田 昭盛
    • 学会等名
      第38回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] 酸-塩基複合系を利用したイソシアニドのカルボアルコキシ化

    • 著者名/発表者名
      沖津 貴志、長瀬 建太、西尾 信彦、和田 昭盛
    • 学会等名
      第38回反応と合成の進歩シンポジウム
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] Synthesis of Benzoxazoles by Tandem Migration-Carboalkoxylation

    • 著者名/発表者名
      Okitsu, T.; Nagase, K.; Nishio, N.; Wada, A.
    • 学会等名
      IKCOC-12
    • 発表場所
      Kyoto
  • [学会発表] First Total Synthesis of Marine Carotenoids Amarouciaxanthin A and B

    • 著者名/発表者名
      Yamano, Y.; Chary, M. V.; Wada, A.
    • 学会等名
      IKCOC-12
    • 発表場所
      Kyoto
  • [学会発表] イナミドのヨード環化反応を利用したベンゾフランの迅速合成

    • 著者名/発表者名
      沖津 貴志、中田 康平、和田 昭盛
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] アレナミドとアゾ化合物の[2+2]環化付加反応と続く求核的開環反応の開発

    • 著者名/発表者名
      沖津 貴志、吉田 裕司、和田 昭盛
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] Salomoxanthinおよびdeepoxysalomoxanthinの全合成

    • 著者名/発表者名
      山野 由美子、江末 浩太郎、江野 克洋、疋田 有佳梨、和田 昭盛
    • 学会等名
      日本薬学会第133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] 合成化学的アプローチによる新規レチノイン酸アナログ-7-ヒドロキシレチノイン酸-の構造確認

    • 著者名/発表者名
      山野 由美子、脇本 友絵、笠原 奈那子、和田 昭盛
    • 学会等名
      日本薬学会第132年会
    • 発表場所
      横浜
  • [図書] 基礎から学ぶスペクトル解析2012

    • 著者名/発表者名
      和田 昭盛
    • 総ページ数
      143
    • 出版者
      廣川書店
  • [備考] 神戸薬科大学生命有機化学研究室

    • URL

      http://www.kobepharma-u.ac.jp/~ocls/

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公開日: 2014-07-24  

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