研究課題/領域番号 |
23590142
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
藤島 利江 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (90286980)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビタミン / ホルモン / 核内受容体 / ステロイド |
研究概要 |
標的受容体に存在する重要なアルギニン残基を指向する官能基として,カルボキシル基またはそのバイオイソスターを導入したビタミンD誘導体の設計と合成を開始した.ビタミンDに特有なトリエン部分の構築は,鎖状のA環部前駆体と側鎖部を含むCD環部分を別途合成して後に,パラジウム触媒を用いてカップリングする収束的方法を用いた.まずはA環部前駆体の効率よい合成を目指し,2α位への側鎖部導入,続いて1α位水酸基の代替となりうる官能基を有する25-ヒドロキシビタミンD3誘導体の合成が完了した.活性評価として,まずはVDR親和性を測定した.2α位より伸長した側鎖末端に導入したカルボキシル基は,比較化合物として合成したメチルエステル体に比べ,受容体親和性を上昇させる効果が見られ,その効果は側鎖部の炭素数に依存した.これまで,当研究代表者および他のグループによっても示されているが,収束的合成法の利点は,A環部とCD環部の同時修飾が容易であることである.ビタミンD受容体リガンドにおけるA環部機能と側鎖部機能は,それらの組み合わせにより,相加的にも相乗的にもはたらく.A環部にカルボキシル基またはそのバイオイソスターを導入することで得られた知見は,同時修飾ハイブリッドアナログへと展開が可能であると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としていた,2α位から伸長した側鎖部にカルボキシル基導入したリガンドの合成は完了した.確立できたA環部合成法に基づき,炭素鎖のさらなる伸長を行うことで他の機能を調べることができると考えている.6年制学部学生2名は,5年次の実務実習に出ていない時期のみではあるが,研究協力者として実験を行って成果を上げ,研究目的の達成に寄与した.
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今後の研究の推進方策 |
1α位水酸基の欠損した25-ヒドロキシビタミンD3の誘導体では,1α,25-ジヒドロキシビタミンD3に比べて,1位付近に空間が存在する.この空間をどのように埋めるのが良いのかどうか,置換基および側鎖炭素数を変えてドッキングスタディを行うとともに,1α位水酸基を復活させた誘導体と比較する.引き続き,当大学にてVDR親和性測定,転写活性能を検討するが,ビタミンD誘導体の代謝活性化・不活性化に関しては,他大学研究者と共同研究を行う必要がある.一般に,ビタミンD不活性化にはシトクロムP450酵素である24位水酸化酵素(CYP24A1)が関与し,側鎖部24位に水酸基が導入され,最終的には側鎖が切断される.A環部にカルボキシル基を持つ誘導体が,24位水酸化酵素(CYP24A1)のよい基質となるかは不明である.さらに,合成予定の2-カルボキシ-25-ヒドロキシビタミンD3等,1位水酸基を持たない化合物は,生体内においては25-ヒドロキシビタミンD3と同様,1α位水酸化酵素(CYP27B1)の基質となる可能性もある.この場合,酵素により導入される1位水酸基とカルボキシル基とのハイブリッド効果により作用増強が期待される.具体的にはビタミンD代謝経路に関わるCYP27A1,CYP27B1,CYP24A1をそれぞれ発現させた細胞を用いて,in vitro実験を行う予定であり,基質として比較的大量の合成,代謝物同定のための誘導体合成が必要となると考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続いて実践する合成及び活性評価に関し,物品費のうち消耗品である試薬溶媒類の購入は必須となる.さらに,研究成果の発表,共同研究打合せに必要な旅費も計画通りに執行する予定である.昨年度は執行していないが,研究の進捗に伴い,今年度は実験・データ整理等に人件費・謝金を使用する予定である.
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