研究課題/領域番号 |
23590142
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
藤島 利江 徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (90286980)
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キーワード | ビタミン / ホルモン / 核内受容体 / ステロイド / 化学合成 |
研究概要 |
前年度に引き続き,標的受容体に存在する重要なアルギニン残基を指向する官能基として,カルボキシル基またはそのバイオイソスターを導入したビタミンD誘導体の設計と合成を継続して行った.ビタミンDに特有なトリエン部分の構築は,鎖状のA環部前駆体と側鎖部を含むCD環部分を別途合成して後に,パラジウム触媒を用いてカップリングする収束的方法を用いた. A環部前駆体の効率よい合成を目指し,2α位への側鎖部導入,続いて1α位水酸基の代替となりうる官能基を有する25-ヒドロキシビタミンD3誘導体の合成が完了した.さらには,2β位への側鎖導入に関し予試験を開始し,鍵となる化合物の合成に成功した.活性評価として,まずは2α位誘導体に関し,VDR親和性を測定した.2α位より伸長した側鎖末端に導入したカルボキシル基は,比較化合物として合成したメチルエステル体に比べ,受容体親和性を上昇させる効果が見られ,その効果は側鎖部の炭素数に依存した. 次に,天然ビタミンD受容体において重要な位置を占めるA環部近傍ポケットをターゲットとしたリガンド設計に着手した.この受容体ポケットは,親水性アミノ酸残基群からなり,天然リガンドの受容体結合では水が内包されていると考えられている.そこで,この空間を埋める特殊な官能基として,まずはA環部2位にスピロオキセタンを有する誘導体を合成することとした.オキセタンはカルボニル化合物とジメチル基の性質を合わせもち,化合物の水溶性を上昇させ,代謝による修飾を受けにくいことが知られる.そこで,ビタミンD受容体リガンド設計においてもこの性質は有利であると考えた.現在,A環部とCD環部を別々に合成する収束的方法に必要なオキセタンを有するA環部の合成が完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き,2α位から伸張した側鎖部にカルボキシ基導入したリガンドの,炭素数を変化させることにより,特定のアミノ酸残基との相互作用を増強する効果を発見することができた,さらには,カルボキシ基に比較して水素結合能が低いと考えられた新たな官能基の導入も,炭素数によっては作用増強に繋がることが示唆されたのは驚きであった.このように,新化合物の設計,合成は概ね順調に進展していると言える.一方,生物活性を測定するにあたり,まずはVDR結合能を調べていたが,受容体供給の制限があり,これまでのプロトコールを使用できなくなった.そのため,手法確立に時間と費用がかかっているのは事実である.
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今後の研究の推進方策 |
新しい誘導体合成においては,これまでの2α位置換体に加え,2β位置換体にてカルボキシ基の影響を調べるため,設計と合成を進めていく.さらにスピロオキセタンの合成に関しても,他の部分における置換基導入を試みる.前年度の目的物のひとつであった1α位水酸基の復活に関しては,合成上の問題を解決する.生物活性評価にて最初に用いているビタミンD受容体結合能試験は,これまで使用していたプロトコールを応用し,新しい系の確立を試みる,研究の最終年度を迎えるにあたり,様々な生物活性評価を行うことにより,ビタミンD受容体からのアプローチが生物の応答をどのように変化させるのか次のリガンド設計に活かしたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続いて実践する合成及び活性評価に関し,物品費のうち消耗品である試薬・溶媒類の購入は必須である.さらに研究成果の発表,共同研究打ち合わせに必要な旅費も計画通り執行する予定である.人件費及び謝金については,今年度は大きく執行する予定はないが,研究の進捗に伴い少額の執行は予想される.
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